やけどは、西洋医学的に3つの程度(重症度)で分類されます。

 

「I度やけど」は、やけどした皮膚表面が赤くなり、患部を冷やす、軟膏を塗るなどして数日で自然に治るものです。カイロを使った低温やけどや日焼けもI度に該当します。

 

「II度やけど」は水泡(みずぶくれ)ができるやけどで1~2週間で治りますが、II度でも深達性(深くまで及んでいる)の場合は、病院を受診し治癒まで1か月以上かかることがあります。また皮膚にひきつれや傷痕ができることがあります。

 

「III度やけど」は、重症のやけどで命にかかわる場合があります。

 

 

やけどをしたら、その深さや広さによって適切な治療を早急に選択することが大切です。

 

漢方薬が治療適応となるのはI度~II度の浅いやけどになります。

 

漢方薬を用いる場合には、やけどまずは直ぐにやけどした患部を冷やし、細菌感染が起こらないようにしっかり洗浄し、その後症状の状態に合った漢方薬を使います。

 

漢方薬を用いる治療は一つの選択肢ではありますが、実際には、やけどの症状判断が難しいときは、早期に病院を受診することをおすすめします。病院の治療では、傷の治癒を促進させるステロイド軟膏や、皮膚の壊死した組織を取り去る軟膏、細菌などの感染予防のための軟膏やクリームなどが処方されます。

 

 

やけどを負ったときは、食事にも気をつけるとよいというのが東洋医学の考えなので紹介します。

 

炎症が強く、患部や身体が火照るようであれば、身体の熱を取るもやし、セロリ、レンコン、なし、スイカ、海藻類などを積極的にとりましょう。セロリ、パクチー、大葉などの香味野菜は、熱を取る以外にも気を巡らせる作用もあります。

 

また逆に身体を温めるような香辛料類や鶏肉などの多色は避けます。お肉なら豚肉の赤身部分をおすすめします。豚肉には傷の治りを促進するビタミンが含まれています。

 

 

やけどにおすすめの漢方薬

 

『紫雲膏』 ◇やけど漢方薬のファーストチョイス‐

紫雲膏の生みの親は、江戸時代の外科医、華岡青洲(はなおか せいしゅう)で、全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を世界で初めて成功させた人物としても有名です。

 

古い医書である「外科正宗」に記載されている潤肌膏に、青洲が豚脂(豚の脂)を加えて改良したものです。構成生薬の当帰には血を補う「補血」と血の滞りを改善する「活血」の作用があり、軟膏の赤色のもととなっている紫根には解毒の作用があります。

 

これらが相まって傷の治癒力を高めます。またゴマ油、豚脂、ミツロウは皮膚の保湿を高めますが、特に豚脂は皮膚再生にも影響しているといわれています。

 

 

現代の再生医療技術でも、豚を使った人間の皮膚や臓器の再生実験などが行われており、世界各地でも実験成功が相次ぎ、同時に大きな議論を起こしています。

 

江戸時代に生きた華岡青洲に、ここまでの考えがあったのかはわかりませんが、潤肌膏に豚脂を加えたのには理由があったに違いありません。

 

紫雲膏は、軽度のやけどの他、肌荒れなど乾燥性の皮膚の不調、痔核による痛みにも使われますが、ジュクジュクと患部が化膿している状態には適していません。

 

赤紫色の軟膏なので使用する際、衣服が汚れないようガーゼを当てるなど工夫してください。また豚脂が入っているため、独特の匂いが苦手と感じる人もいるようです。ドラッグストアでは1000円以内で購入できるチューブタイプもあります。

 

 

『太乙膏』(タイツコウ) ◇みずぶくれがつぶれてジュクジュク湿潤しているとき

太乙膏は、西暦1100年頃に中国で書かれた和剤局方という書物にある処方を元に作られた軟膏薬です。

 

紫雲膏と異なり、患部の化膿の有無、傷を負ってからの期間などに関わらず、長い期間使用できる軟膏で、皮膚組織の修復作用があります。軽度のやけどの他、アトピー性皮膚炎などに多いかゆみや床ずれなど様々な皮膚の不調にも適しています。

 

構成生薬の当帰、芍薬、地黄は、いずれも血を補う「補血」の作用があり、皮膚に栄養を与えます。

 

 

また百芷と桂皮は皮膚表面の湿を取り除く「発表」作用があるため、患部がジュクジュクして、かゆみや痛みを伴う傷などに特に適しています。

 

太乙膏は薄いクリーム色をしており、その点は紫雲膏より使い易いですが、匂いはやはり独特でスパイシーです。女性より男性の方がこの匂いに抵抗があるようですが、家庭の常備薬として是非薬箱に置いておきたいものです。