■痙攣を引き起こす疾患

痙攣(けいれん)とは自分の意思に関係なく、全身や体の一部の筋肉が収縮する状態のことです。筋肉が勝手にピクピクと動いたり、硬直して痛みを伴う場合もあります。痙攣は原因が脳にあるものと、脳以外にあるものの大きく2つに分けられます。

疲れている時に瞼がピクピクしたり(またはそういう方を見かけたり)、緊張した場面で首振りをしたりすることを経験する人は多くいます。自分では原因がわからず、また解決方法がわからず悩んでいる方もいますので、そういう方にしっていただきたいページです。

 

・脳そのものが原因となるもの

脳梗塞や脳出血などの脳血管障害脳腫瘍頭部外傷感染症などにより脳の組織がダメージを受けることで、全身や手足などの痙攣が起こることがあります。またてんかんでは全身の筋肉が硬直し、痙攣するといった発作の症状があらわれることがあります。てんかんの中には、上記のような脳疾患が原因となるもの(症候性てんかん)もあります。

 

 

・脳以外の原因によるもの

 

筋肉疲労や血行不良

 過度の運動などの筋肉疲労により、筋肉内部で神経の命令を伝達するカルシウムやマグネシウムのバランスが乱れ、突然筋肉が収縮することがあります。また冷えて血行不良になることで神経の動きが鈍り、筋肉の硬直などの痙攣状態になることもあります。例として、ふくらはぎの筋肉が急激に収縮し傷みを伴う「こむらがえり」や、目の酷使やストレスが原因で目の周りの筋肉がピクピク痙攣する「眼瞼(がんけん)痙攣」などがあります。

 

片側顔面痙攣

顔の片方の、目の周りや頬などがピクピクと動いたり、ひきつれたりします。顔の動きを司る顔面神経が、脳の血管に圧迫されることが原因といわれています。

 

チック

 まばたきや首ふり、顔をしかめるなど自分ではコントロールできない動きを繰り返します。脳内の神経回路の異常や、行動や情緒に影響を及ぼす神経伝達物質のバランスが悪いことが原因とされ、遺伝的素因も関係すると考えられています。動きを繰り返す運動性チックと、発声や咳払いなどをする音声チックがあります。

 

三叉神経痛(有痛性チック)

 顔の感覚情報を脳に伝える三叉神経が、脳に流れ込む血管に触れたり圧迫されたりすることで痛みを感じると考えられています。食事や歯磨きなどの刺激で症状が誘発されることがあり、短時間の鋭い痛みが繰り返し起こります。痛みが起こる時に筋肉がピクッと痙攣することがあり、有痛性チックとも呼ばれています。

 

ジストニア

 脳や神経系統の何らかの障害により、持続的または不随意に筋肉が収縮したり固くなったり(ジストニア運動)する疾患です。全身性と局所性に分けられ、発症した部分や原因(不明の場合や遺伝子異常もあり)などにより様々な症状があります。例として、頸部の筋肉が異常に収縮することで首が曲がった状態になる頸性斜頸(けいせいしゃけい)や、職人やピアニストなどが同一の作業を繰り返し行うことで、上肢が筋痙攣を起こして動きに支障が出る職業性ジストニアなどがあります。

 

 

効果的な漢方薬治療と対策

 

・こむらがえり

芍薬甘草湯・・・筋肉の痙攣は「肝」の機能亢進が原因といわれています。芍薬甘草湯には、肝の機能を改善して肝に血液を補い、「気」をのびやかにする効果があります。こむらがえりだけでなく、筋肉の急激な痙攣に用いる代表的な漢方薬です。

 

四物湯・・足の痙攣やこむらがえりの原因として、抹消血流の悪化によって筋肉に十分な血液と栄養が行きわたらないことがよくあります。その場合は「血」を補って血流を改善し、抹消に栄養を与える漢方薬を用います。著しく胃腸虚弱な人への投与は注意が必要です。

 

 

・眼瞼痙攣

加味逍遥散・・・ストレスが原因で「肝」での「気」の流れが悪くなっている(肝気うっ滞)と、まぶたがぴくぴく動いたり眼精疲労といった症状が起こりやすくなります。このような場合には、滞った肝気をゆるやかにする漢方薬が効果的です。体力中等度の人に向いています。イライラが強いタイプの人には抑肝散を用います。

 

四物湯・・・肝に蓄えられている血液が不足していると、栄養不足により目に影響が出ることがあるので、血を補って肝の働きを整える漢方薬が効果的です。「肝気うっ滞」が同時にある場合は、加味逍遥散と合わせて用いることもあります。

 

六君子湯・・・慢性的に胃腸が弱っていると、食物から栄養をしっかり吸収できなくなります。このような「脾気虚」がある場合は、胃腸を丈夫にして滋養作用のある漢方薬が効果的です。より体力が弱っているような人には補中益気湯が用いられます。

 

・チック

チックは漢方でも痙攣の一種として考えられています。その原因である「肝」の高ぶりを抑え、気持ちを安定させる効果のある漢方薬が用いられます。気持ちの高ぶりがある場合に使用する抑肝散(胃腸が弱い人には抑肝散加陳皮半夏)や、体力があり不安や不眠がある場合の柴胡加竜骨牡蛎湯(体力がない人には桂枝加竜骨牡蛎湯)などがあります。また発作的な痙攣に頓服として芍薬甘草湯を用いることもあります。

 

三叉神経痛

漢方では、「(気候、風邪など)」「(寒いこと)」「湿(体に停滞した水分)」が血流を止めていることが原因とされています。

 

桂枝湯・・・血流を良くし体を温める効果があり、風邪薬として良く用いられる漢方薬です。痛みや筋肉の緊張をとる生薬が配合されています。体力がないタイプの人に向いています。

 

葛根湯・・・こちらも風邪薬として有名な漢方薬です。血行を良くして筋肉の緊張をほぐし、痛みやしびれなどを改善する効果があります。比較的体力がある人に向いています。

 

五苓散・・・体内の余分な水分を排出させる作用があります。比較的体力を選ばず使用できる漢方薬です。

 

麻黄湯附子細辛湯・・・体を温めて冷えを取り、疼痛を和らげる効果があります。体力が弱く、手足に冷えがあるタイプの人に向いています。