症状の特徴

トイレが近く、夜中に何度も起きてしまう頻尿、ふとした拍子に尿をもらしてしまう尿もれ、尿失禁は、高齢者だけに限らず、最近では若い世代にも見られる症状です。

 

これらの尿に関するトラブルは、口に出すのが恥ずかしいため、1人で悩んでいる人が多いようです。治療をすれば改善が可能なのに、ほとんどの人が「年のせいだから仕方がない」「治療をしても治らない」「恥ずかしい」と思い、実際に受診しない人も多いです。

 

頻尿の原因としては、膀胱が小さい、過活動膀胱、水分の過剰摂取、膀胱炎・尿道炎などの尿路感染症、間質性膀胱炎、骨盤の筋力低下、糖尿病、子宮筋腫、便秘、心因性、薬の副作用などが考えられます。

 

急に症状が出てきた場合、すなわち急にトイレが近くなり、排尿時に痛みを感じる場合は、膀胱炎などの尿路感染症の可能性が高いです。これは、大腸菌などの細菌が原因で膀胱に炎症が起こり、過敏になっているため、少ししか尿が貯めることができなるためです。

 

最近知られるようになった、間質性膀胱炎は原因不明の膀胱の炎症で、頻尿、残尿感、下腹部痛などの症状があります。膀胱に尿がたまると、強い痛みが生じるのが特徴で、排尿後に痛みは軽くために、必然的にトイレに行く回数が増えます。

 

また、加齢とともに、骨盤の筋力が低下し、子宮や膀胱が下がるため尿が出にくくなり、頻尿が起こる場合もあります。

 

過活動膀胱は40歳以上の1~2割に見られ、全国で約810万人が過活動膀胱患者であると推定されます。80歳以上では、ほぼ3人に1人となっています。過活動膀胱の原因は、脳血管障害や脊髄の障害の後遺症によっておきる神経因性と加齢による排尿機能の低下や骨盤底筋の衰えなどによる非神経因性に分けられます。

 

西洋医学の治療

尿に関わる治療を行うのは、泌尿器科です。女性の場合でもです。ただし女性の場合、婦人科でも治療ができます。

 

受診する前に、2~3日ほど24時間単位でトイレに行った時刻と大体の排尿の量、1日の排尿回数、1日の水分摂取量、尿もれがある場合は、その時刻と状況などを記録したものをあらかじめ用意しておくと、受診した際、客観的に自分の症状を把握できるので非常に役立ちます。

 

まず、尿検査によって、潜血の有無、腎機能、糖尿病の有無、尿の濃度、貧血症状、炎症の有無、肝機能状態などを調べます。おおよその原因を検討します。

 

尿路感染症の場合は、ニューキノロン系、セフェム系の抗生物質が使われます。早い人は薬を飲んで1日、ふつう2~3日で排尿痛や頻尿の症状は改善されます。ただ、症状はよくなっても細菌が生き残っていることがあるので、症状の程度や年齢、持病などによって3日から1週間ぐらいは薬の服用を続けるのが基本です。それ以降はぶり返さなければ飲む必要はありません。

 

感染症が原因でない場合は、薬物療法で症状の改善をめざすのが基本となっています。薬物に加えて、生活スタイルの見直しの指導、膀胱訓練や骨盤底筋体操を組み合わせて治療をしていきます。

 

薬物療法で最も多く用いられているのは、抗コリン薬のベシケア、バップフォー、デトリシトール、ウリトス、ステーブラ、トビエースなどです。副交感神経から放出されるアセチルコリンの働きをブロックして膀胱の過剰収縮を抑えます。さらに膀胱の緊張を緩め、頻用や尿意切迫感を和らげる作用があります。しかし、抗コリン薬は便秘になったり、口が渇いたり、目がかすむといった副作用があります。また、眼圧を高める作用があるため、緑内障の人には使えません。

 

抗コリン薬の他に用いられているのは、2011年に発売されたβ3アドレナリン受容体刺激薬であるベタニスです。これは、膀胱の筋肉を緩ませ、蓄尿機能を高める作用があります。抗コリン薬に比べて、比較的副作用が少ないといったメリットもあります。

 

 

漢方医学の尿トラブルの治療

急性の炎症がある場合は、西洋薬の抗生物質を中心に治療を行いますが、漢方薬は抗生物質と併用することで、治療効果を早めたり、再発を防ぐことができる、という報告があります。さらに、膀胱炎の症状の緩和にも効果があります。主に、猪苓湯や竜胆瀉肝湯などが用いられます。高齢者など体が弱い人には、五淋散が適しています。また、体力が弱く、神経質で、ストレスをためている人には、清心蓮子飲が適しています。

 

慢性の頻尿は漢方医学では、体が冷えることにより、血や水の巡りが悪くなり、「腎虚」が生じるためと考えます。血や水の巡りを改善する当帰芍薬散、血液循環を改善し、体を温める四物湯、真武湯や、水分の代謝を改善する苓桂朮甘湯や腎虚を改善する八味地黄丸や牛車腎気丸が用いられます。

 

また、骨盤底の筋力低下が原因の場合は、気を補う作用のある補中益気湯や血を補う作用のある当帰芍薬散を中心に用います。

 

頻尿・尿失禁に対して用いられる主な漢方処方

 

以下に体力別/随伴症状別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 体力のある人
  • 尿失禁、頭痛、首や肩のこり→葛根湯
  • 頻尿、尿失禁、排尿困難→大承気湯
  • 体力が中程度の人
  • 頻尿、尿失禁、胸脇苦満、腹痛、下痢→四逆散
  • 頻尿、尿意切迫、尿失禁、排尿困難、残尿感、排尿痛、膀胱炎→猪苓湯竜胆瀉肝湯
  • 体力がない人
  • 頻尿、尿意切迫、尿失禁、排尿困難、疲労感、冷え性、しびれ→牛車腎気丸八味地黄丸
  • 頻尿、尿意切迫、尿失禁、排尿困難、倦怠感、残尿感→清心蓮子飲
  • 頻尿、尿失禁、疲労感、貧血、腹痛、冷え、手足のほてり→小建中湯
  • 尿失禁、胃腸虚弱、食欲不振→補中益気湯

 

 

ライフスタイルで注意すること
コーヒーなどのカフェインを含んだ飲料やアルコール、体温より冷たい食べ物や飲料を控えることが大切です。また、骨盤底の筋肉を強化する骨盤底体操をして頻尿を改善することができます。

 

 

参考文献

 

・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・病気がみえる8腎・泌尿器 膀胱炎p251~、過活動膀胱p302~

・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)

・膀胱炎http://www.jfpa.info/wh/body_information/detail/index.php?aid=360

・膀胱炎に用いられる漢方薬https://minacolor.com/articles/show/2088