疲れ

 

「あ~疲れた」と思わず口から出てきたことはありませんか?激しい運動をした後、仕事や勉強など何かに集中した後、疲れを感じたことがない人はいないと思います。疲れは体からの休みなさいというシグナルだと考えたらよいでしょう。通常は、もし疲れを感じたら、ゆっくり入浴したり、睡眠をとったり、十分な休養をとることで疲労が回復します。そのようにしてまた元気な状態に戻れるならいいのですが、問題はいつまでも疲れが抜けない場合です。疲れを感じていながらも休むことができず、無理を重ねてしまうこともあるでしょう。しかし積み重なった疲れは次第に休むだけでは回復できなくなっていきます。特に原因が見当たらないにも関わらず、何ヶ月も疲れが続くような場合は、放っておくと大きな病気を引き起こしかねないので要注意です。できるだけ疲れが軽いうちに早目の対処をしていくことが重要です。

 

一概に疲れといっても、人によって症状や原因が異なるので、対処の仕方も違ってきます。

疲れの原因としては、激しい運動、長時間の肉体労働、運動不足、睡眠不足、不規則な生活、偏った食事、栄養不足、ストレス、病気などが挙げられます。

 

疲れの種類は、肉体的な疲れと精神的な疲れに分けられます。

肉体的な疲れには、運動をした後の筋肉の疲れがあります。筋肉を使い続けると、体内に疲労物質がたまり、体の疲れを感じるようになります。また、立ち仕事やデスクワークなど、長時間同じ姿勢をとることによっても筋肉の緊張状態が続き、疲れを感じます。こういった肉体的な疲れは、体をしっかり休め、栄養を補給し、血行をよくすることによって、疲労物質がなくなれば早く回復します。

 

一方、精神的な疲れとは、いわゆるストレスからくるものをいいます。ストレスを受け続けることにより心が疲れ、体にも影響を及ぼすようになります。するとイライラしたり、頭がボーっとして集中力が落ちたり、やる気が出ないといった症状が現れるようになります。このような場合、休養をとったから疲れがとれるとは限りません。もちろん、栄養補給や十分な睡眠も大切ですが、加えてスポーツなどで気分転換したり、ストレスの原因を取り除くなどの心のケアも必要です。

 

肉体的な疲れと精神的な疲れは切り離せるものではなく、互いに影響しあっていますが、精神的な疲れの比重が大きいと慢性化しやすいようです。慢性化すると、朝起きれない、休養をとっても疲れがとれない、一日中だるい、少し動いただけですぐ疲れるなどの症状に悩まされます。日常生活に困難をきたす程に極度の疲労が6ヶ月以上続く場合には、慢性疲労と区別して「慢性疲労症候群」と呼ばれます。いくら検査をしても異常が見つからず、原因が分からないため、明確な治療法が確立されていないのが現状です。

 

では、漢方医学では「疲れ」をどのように見るのでしょうか。

特に異常はないけれど体の調子がおかしいという状態を、漢方医学では「未病」の状態といいます。病気になる前段階の状態です。疲れが長引く場合も未病と考えます。この未病に大きな力を発揮するのが漢方薬です。

 

疲れの原因として考えられるのが「気虚(ききょ)」という状態です。「気」というのは体内を巡っている生命エネルギーのことですが、この気が不足している状態を指します。過労によって気を大量に消耗すると、疲れを感じるようになりますが、睡眠や食事などで再び気を補えば、疲れが解消します。しかし、気を補うことができず、気が不足した状態が続くと、さらに悪化して、気と関係が深い「血」が不足する「血虚(けっきょ)」という状態を招きます。特に胃腸の働きが低下していると栄養をしっかり吸収できなくなり、気や血を作ることができないので「気虚」や「血虚」あるいは両方が不足した「気血両虚(きけつりょうきょ)」という状態を引き起こしやすくなります。

 

したがって治療には「気」と「血」を補い、消化器の働きを助ける漢方薬を用いると効果的です。

疲れに対してよく用いられる代表的な漢方薬は、気を補う補気薬として知られている「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」です。食べ物の消化吸収をつかさどる「脾」と「胃」の機能を回復し、気の取り込みを増やし、全身に栄養を巡らせる働きをします。長期的に服用することによって胃腸が丈夫になり、体質改善することが期待できます。胃腸が弱い人には「六君子湯(りっくんしとう)」も有効です。

 

体力の衰弱が強い場合には気と血の両方を補うものとして「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」が用いられます。気力低下が激しく、精神的な疲れが強い場合には「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」を使います。

 

忙しい現代人にとって、疲れはどこか当たり前と思ってしまいがちですが、疲れは痛みや熱と共に体の異常を知らせる三大生体アラームと呼ばれています。疲れを無視してその場しのぎで無理をすることはできますが、結局は後から自分の体により大きくはね返ってきます。日頃から疲れをためないようにバランスのとれた食事、規則正しい生活、適度な運動を心がけると共に、自分に合ったストレス解消法を探して、心と体を癒していくことも大切です