芍薬甘草湯の特徴

痛み止めの頓服薬として昔から使われてきました。即効性があることで有名で、急激に起こる筋肉のけいれんを伴う痛みに対して使われ、こむら返り(足が急に「攣る(つる)」こと)や、急性の腰痛、下肢痛に用いられるほか、内蔵の筋肉のけいれんに伴う痛み、例えば、胃痛や胆石・尿路結石の発作時の疝痛、月経痛(生理痛)にも用いられます。

 

筋肉のけいれん(こむら返り)に使われる漢方薬の使い分けとしては、芍薬甘草湯と比べた場合、体力が比較的ある人には芍薬甘草大黄湯(シャクヤクカンゾウダイオウトウ)が効果的で、体力のない人には芍薬甘草附子湯(シャクヤクカンゾウブシトウ)が効果的です。

 

中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)」に記されています。

 

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芍薬甘草湯の作用・効果

芍薬と甘草は両方とも、筋肉の緊張を緩和する作用があります。

 

臨床では、肝硬変の人や腎不全で透析中の人などの、筋けいれん対策に用いられています。

 

こむらがえりに対する芍薬甘草湯の効果

こむらがえりとは、局所の筋肉の痛みを伴うけいれん(=足がつること)です。健常人でもまれに過激な運動時、発汗・下痢などの脱水時に起こるとされています。考えられている機序としては、急に血管の中の水分が低下した状態が悪影響をしているのでは、というものです。しかし、何度も起こるようであれば糖尿病、尿毒症、循環障害、慢性肝炎等の病気を考える必要があります。

 

芍薬甘草湯の芍薬に含まれるペオニフロリンという成分は、筋肉が収縮するために必要なカルシウムの細胞内流入を減らし、結果として筋肉の収縮を押さえると考えられています。これに加え、甘草に含まれるグリチルリチンは、カリウムイオンの流出を増やすことで、最終的に神経筋シナプスのアセチルコリン受容体に作用し、筋弛緩の働きをもつとされています。

 

糖尿病で、特に運動療法の歳にこむらがえりを起こしやすい、という方に対しては、9割の患者で効果的であったという報告(神経治療, 12:592-534, 1995)があります。

 

透析患者に対しては、2.5gの1包の頓服(症状が出てから飲む)でも、88.5%で有効であり、効果発現も数分単位で早かったと報告(Nikkei Medical, 29(3):34-35, 2000)されています。

 

漫然と使用するのは(例えば1日3回予防的に内服するなど)、副作用の点から好ましくないため、予防で使用する場合や高齢者で副作用が心配な場合のこむらがえりでは、八味地黄丸や牛車腎気丸などの甘草を含有していない、こむらがえり対策漢方薬も選択肢になります。

 

本態性音声振戦症に対する芍薬甘草湯の効果

本態性声音振戦症とは、声を出すときにのみ、声帯や喉が震えてしまうことにより、声が震えてしまう状態で、動作性振戦の一種類として考えられており、原因がはっきりしませんがプレゼンテーションの時や発表の時に声が震えてしまい、困る人が居ます(ただし多くは50歳代以降に多い状態です)。

 

西洋医学ではβ遮断薬や抗けいれん薬を使用したり、抗不安薬を使用したり、場合によってはボツリヌス毒素を甲状腺披裂筋内に注入したり、という場合もありますが、耳喉頭頸 82(9):607-612,2010では、これに対し芍薬甘草湯が有効であったと示唆する論文が出ています。

 

 

癌治療に伴う筋肉痛、関節痛に対する芍薬甘草湯の効果

パクリタキセルなどの抗がん剤は、神経障害性疼痛を起こすことが知られており、これはとても強い痛みで、時に治療自体に支障が出る場合があります。

 

NSAIDsやグルタミンや、抗うつ剤などとともに、芍薬甘草等が使用される場合があり、筋肉痛の強さ(Pain scale)と、筋肉痛の持続時間ともに有意に低下したというデータがあります。参考:臨婦産・66 巻 1 号・2012 年 1 月

 

 

婦人科領域での芍薬甘草湯の効果

また、芍薬甘草湯は下垂体のドパミンレセプターに作用してプロラクチン分泌を低下させる、卵巣からのテストステロン分泌を低下させる作用を有するとされ、不妊症領域で併用されることがあります。

 

月経痛に対しても有効なことがあり、,月経の2~3日前から芍薬甘草湯を朝
昼晩と1日3回、5日から1週間ほど服用すると、月経痛が非常に楽になる方が居ます。

 

 

大腸内視鏡前の芍薬甘草湯の効果

大腸内視鏡前に、前投薬として芍薬甘草湯を使用したところ、約6割の方で大腸弛緩作用があったという報告があります。

 

月経痛(生理痛)に対する芍薬甘草湯の効果

産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2014-婦人科外来診療における漢方薬の選択という部分では、月経痛(生理痛)の項目のCQ301番で、 機能性月経困難症の治療は?の選択肢として芍薬甘草湯があげられています。芍薬甘草湯は筋肉の痙攣性の痛みを改善する作用があるため、子宮という筋組織が過度に収縮してしまいおこる月経痛(生理痛)に頓用(痛いときに飲む)で用います。

 

 

芍薬甘草湯の成分・効能

芍薬甘草湯は芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)だけで構成されているシンプルな漢方薬です。

 

芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)の巡りをよくする作用があります。筋肉のけいれんを鎮めたり、鎮痛作用もあります。

甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和や、緊張を緩める作用があります。

 

芍薬の主成分であるペオニフロリンと、甘草の主成分であるグリチルリチンは、単独では疼痛効果は弱いとされていますが、二つが合わさるとブレンド効果と呼ばれる相乗効果を発揮し、疼痛にも作用するとされています。

 

芍薬甘草湯の副作用

配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。

 

特に、芍薬甘草湯は、1日量の甘草含有は6gと、他の漢方薬に比べても圧倒的に多いです。そのため、毎日漫然と使用するのには向いていません。構成生薬は2つと少ないため、構成生薬が少ないほど即効性があるとされる漢方薬の定石通り、頓用で使用することも検討すると、副作用が減ります。

 

甘草の含有量と偽性アルドステロン症

 

芍薬甘草湯 飲み合わせ

芍薬甘草湯は、甘草の含有量の多い薬剤です。そのため、カリウムが下がってしまうような利尿剤(尿を出す薬)との併用は注意が必要です。具体的には、フルイトランⓇ・ダイクロトライドⓇなどのサイアザイド系の利尿剤や、ラシックスⓇ・フロセミドⓇ・ダイアートⓇ等のループ利尿剤系の利尿剤です。飲み合わせていけないわけではありませんが、併用している場合には気をつけて血液検査を行っていくことが勧められます。

 

 

芍薬甘草湯の服用方法

ツムラ 芍薬甘草湯エキス顆粒によると、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとなっています。ただし、頓用でも効果を発揮するため、症状が出てから飲むという方法も安全性があがり有効です。

 

なお、年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。