潤腸湯の特徴

名前の通り、腸を潤して、便通をよくする漢方薬です。便の水分量が減って硬くなり、コロコロとした硬い便が出る場合にもちいられます。特に高齢者の弛緩性または、けいれん性の便秘に効果があります。

 

中国・明時代の「万病回春(マンビョウカイシュン)」に記されています。

 

次のような人に有効です。

・体力は中くらい
・高齢者
・皮膚が乾燥している
・腹部膨満感がある
・便秘症の人

 

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潤腸湯の作用・効果

当帰(トウキ)、地黄(ジオウ)、桃仁(トウニン)、麻子仁(マシニン)、杏仁(キョウニン)は腸を潤し、便を軟らかくする作用があります。

 

大黄(ダイオウ)、厚朴(コウボク)、枳実(キジツ)は便を下す作用があります。黄芩(オウゴン)は熱をさます作用があります。甘草(カンゾウ)は炎症を抑え、他の生薬との調和作用があります。

 

慢性の便秘や一過性の便秘にも用いられますが、即効性の下剤ではありません。日常の運動や食事に気をつけるなど、生活習慣の改善も大切です。

 

潤腸湯の便秘に対する効果

潤腸湯は、Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator、通称CFTRと呼ばれる、腸にあるクロールチャネルを開きます。これはどういう意味かというと、

 

①便は、便の中の水分が多いほど排便がしやすい(下痢傾向になる)

②便の中の水分の量は、便の電解質のバランスによって決まる。

③便の中のクロール(クロライド)と言われる物質が多いほど、便は柔らかくなる

④潤腸湯は、腸にあるクロールチャネルを通してクロールを移動させ、便の中のクロールを増やす

⑤便の中の水分が増え、便が出しやすくなる

 

という機序を持っている、という意味です。

 

jyuntyoutou

 

この機序は、西洋薬におけるアミティーザ®(ルビプロストン)と同系統の機序を持つ可能性が示唆され、世界的な消化器科の学会で演題が採択され、話題となりました。

実際に、クロールチャネルを開くだけでななく、水分を増やしたという研究結果もあります。

(上記参考:漢方薬による便秘治療 潤腸湯 24(24)Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.40 No.1 2016 )

それだけでなく、含まれている生薬の大黄は、センノシドと同じ作用で腸を動かし、排便を改善します。

 

特に高齢者やオピオイド系の薬剤を使用している方の便秘に向いた薬剤です。

 

潤腸湯と麻子仁丸の違い・使い分け

潤腸湯にも、麻子仁丸にも麻子仁が含まれており、便を柔らかくする作用があります。そのためこの二つの使い分けは難しいところですが、より乾燥が強い例では潤腸湯のほうが証にあっていると考えられます。

 

潤腸湯と麻子仁丸の比較試験では、より体力がない患者さんに対しては、麻子仁丸のほうが便秘に対して有用であったという報告があります。(参考:高齢者の弛緩性便秘に対する潤腸湯と麻子仁丸の体力差を考慮した調査比較:漢方の臨床1996)

 

また、麻子仁丸のほうが大黄(センノシド的な効果)の含有量が多いので、腸の動かしをもう少し期待したい場合は、麻子仁丸のほうが向いています。それが必要ない場合は、潤腸湯のほうが適しています。

麻子仁丸:ツムラ126番の効果

 

 

潤腸湯と大建中湯の違い・使い分け

潤腸湯は、クロライドチャネルに作用して便の水分を増やし、便を柔らかくします。使い方としては、アミティーザ®に近い作用をイメージすると考えやすい漢方薬です。固いコロコロとした便を、柔らかくして出しやすくする目的で使用します。

 

大建中湯は、便秘にかかわる腹部症状(痛みや腹部膨満感)を伴うような方に適しています。大黄が入っていないため、腸を動かす薬剤を使用し痛みが出てしまうような方には向いている漢方薬になります。

⇒大建中湯:ツムラ100番の効果

 

潤腸湯とダイエット

ダイエット目的に使用する漢方薬としては、潤腸湯の効果で知られているものはありません。ただし、漢方薬としての特性を考えると、防風通聖散との組み合わせが良い証のケースの場合に、併用する医師もいるようです。参考:伝統医学 Vol.8 No.1(2005.3)

 

また、糖質制限ダイエットの方などで、食物繊維が少なく肉類主体で便秘傾向の方に、潤腸湯の出番がある可能性はあります。

 

肥満・ダイエットに使用する漢方薬と使い分け

 

潤腸湯の成分・効能

潤腸湯は、下記の10種類の生薬からなります。

 

・大黄(ダイオウ):タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、「気血(キケツ)の過剰状態を解消して「熱」をさます作用があります。

・麻子仁(マシニン):アサ科アサの果実を蒸したもの。薬効は、水分の循環をよくし、腫れを抑える作用があります。

・杏仁(キョウニン):バラ科の杏の種子。薬効は、胸のあたりの「水(スイ)」の滞りをなおし、咳や痰、息切れの改善作用があります。

・桃仁(トウニン):バラ科のモモの成熟した種子を乾燥させたもの。薬効は、血液凝固抑制作用があります。

・厚朴(コウボク):モクレン科のホオノキの樹皮を乾燥させたもの。薬効は、「気」をめぐらせ、緊張や痛みをやわらげる作用があります。

・当帰(トウキ) :セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを良くします。

・地黄(ジオウ) :ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、「腎」の働きを活性化する作用があります。

・黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさましながら、「水(スイ)」の滞りを除く作用があります。

・枳実(キジツ) :ミカン科ダイダイの未熟果実を乾燥させたもの。薬効は、痰を鎮め、イライラを抑える作用があります。

・甘草(カンゾウ) :マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。

 

 

潤腸湯の副作用

配合生薬の大黄には、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用が認められています。そのため、流早産の原因にもなりかねません。妊娠中の服用については医師とよく相談してください。

 

配合生薬の桃仁(トウニン)の大量服用により、腹痛、下痢、めまいが生じる場合があります。妊娠している人や、下痢や出血しやすい人は注意してください。

 

配合生薬の地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。

 

配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。

⇒甘草の含有量と偽性アルドステロン症について

 

潤腸湯の服用方法

ツムラ潤腸湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。