釣藤散の特徴

高血圧脳血管障害(脳梗塞などの後遺症)にともなう頭痛に用いられる漢方薬です。朝方に起こる頭痛や頭重感に効果があり、頭痛にともなうめまい、肩こり、のぼせなどの症状も改善目的に処方されます。

 

頭痛に対する漢方薬と他の薬との使い分け

 

中国・金時代の「本事方(ホンジホウ)」に記されています。

 

次のような人に有効です。

・体力が低下した、あまり冷えのない人
・年齢が中年以降
・高血圧
・慢性の頭痛・めまい、肩こりがある

 

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釣藤散の作用・効果

麦門冬(バクモンドウ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)は体液を補う作用があります。

 

石膏(セッコウ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、菊花(キッカ)防風(ボウフウ)は脳血管を広げて脳循環をよくし、頭痛、めまい、耳鳴りを抑える作用があります。

 

半夏(ハンゲ)、陳皮(チンピ)は、痰を取り去り、気をめぐらせる作用があります。甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)は胃腸を補い、他の生薬と調和作用があります。

 

薬理学的試験では、釣藤散に末梢の血流の循環を改善する作用が報告されています。

 

頭痛に対する釣藤散の効果

臨床研究では、緊張型頭痛、脳血管障害の慢性期の頭痛症状に対する効果が確かめられています。さらに近年、脳血管障害の後遺症として起こる血管性認知症状の改善効果に注目されています。具体的には、意欲の低下や表情の乏しさ、幻覚、妄想症状などの改善が報告されています。

 

脳梗塞の後遺症による軽度の認知障害患者8例に12週間釣藤散を投与したところ、認知機能低下の改善効果が示されました。(参考 釣藤散の前頭葉機能改善効果 2003)

 

釣藤散の抗認知症作用

脳血管性認知症 (VD)およびアルツハイマー病(AD)認知症モデル動物に対して、釣藤散の効果を示し、ムスカリン受容体(M1受容体)刺激により、直接刺激によりコリン作動性の伝達に関与し、有用であると考えられています。 参考:Matsumoto, K. et al. J Pharmacol Sci. 2013, 122, p.257-269

 

釣藤散と抑肝散の使い分け

認知症の周辺症状は、漢方薬の領域では肝の失調といえますが、興奮系のもの(幻覚・妄想・夜間せん妄・攻撃性・不眠)などは、抑肝散の方が適している。釣藤散は、興奮性の精神症状にも効きますが、どちらかというと意欲の低下や気虚や気うつの人に適しています。

 

高齢者高血圧患者の頭痛に対する効果

Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.37 No.1 2013では、65-86歳の男性に対し、投与約2週間後で10症例の90%で早期から有効以上の改善が得られたとの報告があります。

頭痛に対する漢方薬と他の薬との使い分け

 

釣藤散の成分・効能

釣藤散は、下記の11種類の生薬からなります。

 

・釣藤鈎 (チョウトウコウ) :アカネ科のカギカズラのとげのある枝を乾燥させたもの。薬効は、「肝」高ぶりを抑え、鎮静作用、鎮痙作用があります。

・石膏 (セッコウ):天然の含水硫酸カルシウム。薬効は、止瀉作用、「熱」をさます作用があります。

・茯苓 (ブクリョウ):サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、利水作用があり、余分な水分を排泄させます。

・半夏 (ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、「水(スイ)」の代謝障害を改善するとともに、「気」のめぐりを調節します。

・防風 (ボウフウ):セリ科ボウフウの根を乾燥させたもの。薬効は、かゆみを抑える作用があります。

・菊花 (キッカ):キク科キクの花の部分を乾燥させたもの。薬効は、炎症抑制作用があります。頭痛や目の疲れ、高血圧の治療にもちいられます。

・人参 (ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は、消化機能を高め、「気」の生成を増す作用があります。

・麦門冬 (バクモンドウ):ユリ科のジャノヒゲの根の肥大部を乾燥させたもの。薬効は、組織を潤す作用があります。

・陳皮 (チンピ):ミカン科のウンシュウミカンなどの成熟果皮を乾燥させたもの。薬効は、「気」をめぐらせて、整える作用があります。健胃作用、気分を落ち着かせる作用もあります。

・生姜 (ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える作用があります。

・甘草 (カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張をゆるめる作用があります。

 

 

釣藤散の副作用

配合生薬の人参により、のぼせ、湿疹、蕁麻疹、皮膚炎の悪化などの症状があらわれる可能性があります。

 

配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。アルドステロン症、ミオパシー(筋肉障害)、低カリウム血症の人は使用できません。

 

釣藤散の甘草含有量は1.0gです。この量は比較的多くない量です。

甘草の含まれる漢方薬一覧と偽性アルドステロン症

 

セッコウが含まれているため、食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢、便秘等の消化器症状が出る場合があります。

 

釣藤散の服用方法

ツムラ釣藤散エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。

 

釣藤散はからだを冷やす「清熱剤」ですので、お湯に溶かしたあと、少し冷やして服用するとより効果的です。一般に散剤は速効性を期待しており、のぼせや頭痛などに対しては比較的即効性が期待し処方しますが、臨床では2週間~6週間ほど効果がある場合があります。