麦門冬湯の特徴

古くから咳の治療に用いられている漢方薬です。かぜが長引いて咳や痰が取れないとき(長引く咳)、特に高齢者では最初に処方されることが多いです。気管支炎、気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の咳や痰に使われることもあります。

 

中国・漢時代の「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。

 

次のような人に有効です。

・体力が低下したのぼせぎみの人
・乾いた咳、切れにくい痰がでる
・みぞおちのつかえ感がある
・喉の乾燥感がある

 

口が乾く症状(口腔内乾燥)の方にも用いることがあります。悪性腫瘍、癌の放射線治療後の口腔内乾燥やシェーグレン症候群の口の乾きにも使用されます。

 

麦門冬湯は長引く咳が治らない方にも使用されることがあります。特に乾いた咳の場合、潤す作用をもつ漢方である麦門冬湯はよい適応となるシチュエーションです。冬湯で気道を潤す、滋潤作用が知られ。しかも鎮咳作用だけでなく去痰作用も期待されます。

 

風邪の後に咳だけが長引くような咳が良い適応です。470例を対象とした咳と麦門冬湯の研究では、2.3日ほどの効果が出るまでの期間で、症状が改善されたという報告があります。(東京医科大学 新妻 医師の報告)

 

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麦門冬湯の作用・効果

麦門冬湯の主薬である麦門冬(バクモンドウ)は喉を潤すことで痰を出しやすくする作用があります。半夏(ハンゲ)は、こみ上げる咳や吐き気をしずめる作用があります。これに、滋養強壮作用をもつ人参(ニンジン)、炎症をさます作用がある粳米(コウベイ)、緩和作用の甘草(カンゾウ)などが加わります。これらの生薬が組み合わさることで、よりよい効果を発揮します。

 

咳に対する麦門冬湯の効果

薬効試験では、鎮咳作用や去痰作用が確認されています。また、気管支拡張作用も認められています。臨床応用としては、高血圧や慢性腎炎の治療に使われるACE阻害薬の副作用で出る、空咳の軽減のために使われることがあります。

 

気管支喘息の後の咳などにも使用され、効果があるとされます。咳に対する効果を持つ生薬としては、麦門冬、甘草、半夏が考えられており、麦門冬に含まれるオフィオポゴニンは、気管支炎モデルのモルモットで、咳症状を改善したと報告されています。

 

麦門冬湯の効果が出るまでの期間

麦門冬湯を多数使用しているた新妻医師の臨床経験では、風邪の後の 2~3 日ほどかけて咳が少しずつ改善しはじめるものの、完全には消え切らず、それから 10~14 日く らいかけて、ゆっくりと咳が終息に向かっていくとのことで、はじめにだいぶよくなり、その後さらに少しずつ効いてくというイメージの臨床効果を発揮します。

 

口腔乾燥症(ドライマウス)に対する麦門冬湯の効果

口が乾く原因は、体の中の水分(津液)の不足もや、生成・分布・排泄の失調と考えられ、麦門冬湯と白虎加人参湯がよく用いられます。麦門冬湯は、口が乾くことに加え、体が火照るように感じる人で向いています。

 

シェーグレン症候群に対する口渇に対して使用された研究は興味深く、原発性および2次性のシェーグレン症候群に対し麦門冬湯を使用すると、約70~80%の方で口渇感が改善したという報告があります。

(参考:原発性シェーグレン症候群唾液分泌能改善効果に対する前向き,多施設無作為 2 重盲検試験.日本唾液腺学会誌 2004;45:66-74)

 

麦門冬湯の成分・効能

麦門冬湯は、下記の6種類の生薬からなります。

  • 麦門冬 (バクモンドウ):ユリ科のジャノヒゲの根の肥大部を乾燥させたもの。薬効は、乾燥した組織を潤す作用があります。
  • 半夏 (ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、「水(スイ)」の代謝障害を改善する作用と、「気」の巡りを調節する作用があります。
  • 人参 (ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は、消化機能を高め、新陳代謝を盛んにし、免疫機能を高める作用があります。
  • 粳米 (コウベイ):イネ科イネのえい果。薬効は、滋養強壮作用があります。
  • 大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。胃腸の機能を整えたり、精神を安定させ、筋肉の緊張による疼痛や腹痛などの痛みをやわらげる作用があります。
  • 甘草 (カンゾウ) :マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。甘草の成分の一部であるリクイリチン-アピオサイドの代謝物質であるリクイリチゲニンが、咳止め作用があるという報告も出てきています。(参考:漢方と免疫・アレルギー 15 : 64-76, 2001.)

 

 

麦門冬湯の副作用

水様性の痰が多い人やむくみのある人には適していません。これらの人が麦門冬湯を使用すると、症状の悪化を招く恐れがあります。

 

また、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。肝臓治療薬であるグリチルリチン(グリチロン等)を服用している人は注意してください。

 

また、注意する副作用に「間質性肺炎」があります。空咳が出たり、少し動くと息が切れたり、呼吸が薬くなったりすることがあります。麦門冬湯は咳に対し使用する薬剤なので、知らないと発見が遅れることがあります。

 

麦門冬湯の服用方法

ツムラ麦門冬湯エキス顆粒によると、通常、成人1日9.0gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。