半夏瀉心湯の特徴

胃腸の不調全般に用いられる漢方薬です。みぞおちのつかえ感があり、吐き気や胸焼け、食欲不振、下痢ぎみの人に向いています。急性・慢性胃炎、消化不良、二日酔い、下痢、胸焼け、口内炎、神経症などに用いられます。

 

使用方法には、内服(飲み薬として使用する)以外にも、口内炎に対して含嗽などの用法で使用する方法もあります。

 

「瀉心:しゃしん」とは、みぞおちのつかえのことです。瀉心(みぞおちのつかえ)を取り除く漢方薬で、半夏(ハンゲ)を主薬としていることから、半夏瀉心湯という名前が付けられています。

 

漢方の古典である「傷寒論(ショウカンロン)」や「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記載されています。

 

次のような人に有効です。

・体力は中くらい
・みぞおちにつかえ感がある
・食欲不振で腹がゴロゴロと鳴る
・軟便や下痢傾向

 

半夏瀉心湯は、腹痛の強い下痢軟便には用いられません。腹痛の強い下痢軟便には柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)小建中湯(ショウケンチュウトウ)が適します。また食後に腹が鳴り、下痢腹痛には 平胃散(ヘイイサン)が適します。

 

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半夏瀉心湯の作用・臨床効果

黄芩(オウゴン)、黄連(オウレン)は熱をさまし、イライラや炎症を抑える作用があります。

 

半夏(ハンゲ)、乾姜(カンキョウ)は胃腸を温め、吐き気を抑える作用があります。

 

人参(ニンジン)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)は体力を増進し、胃腸を助ける作用があります。

 

薬効試験でも、胃排出促進作用が確認されています。また、胃粘膜障害への作用や制吐作用、止瀉作用などが示されています。

 

抗がん剤の下痢に対する効果

抗がん剤での下痢に対する効果の報告が多数あります。例えば婦人科の領域では、イリノテカンなどの抗がん剤の影響による下痢に対して、半夏瀉心湯が使用され有効だったという報告もあります(Jpn J Cancer Res 86 : 987─ 984, 1995・・この報告自体は大分前のものですが、使用方法なども記載され、その後多くの文献で引用されています)。

アファチニブ(ジオトリフ)と呼ばれる、新しく出てきたような肺がん治療(EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌)の下痢に対する半夏瀉心湯の使用による下痢改善の報告もあります。(参考:癌と化学療法42 : 581-583, 2015)

 

胃の手術後の胃もたれに対する効果

胃切除の手術を行った後にでてくる、消化器症状に対する半夏瀉心湯と六君子湯との比較試験がされたことがあり、それでは2つの漢方薬両方ともで、約 65%以上の症例で悪心・嘔吐などの吐き気症状、食欲低下、おなかが張って苦しい感じに効果を示したこと、特に半夏瀉心湯が胃もたれ症状改善度が高かったという結果があります。

参考:胃切除術後の消化器症状に対する半夏瀉心湯, 六君子湯の効果.日消外会誌 28:961-965,1995

 

半夏瀉心湯の成分・効能

半夏瀉心湯は、7種類の生薬からなります。

 

・半夏(ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、「水(スイ)」の代謝障害を改善し、「気」の巡りを調節します。嘔吐、悪心、めまい、頭痛などを改善する作用があります。

・黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷ましながら、「水(スイ)」の滞りを除く作用があります。みぞおちのつかえや、胃の不快感、膨満感、下痢の症状を改善します。

・黄連(オウレン):キンポウゲ科のオウレンなどの細い根を除いた根茎を乾燥させたもの。薬効は「熱」を取って、「水(スイ)」の滞りを除き、みぞおちのつかえや膨満感を鳥、腹痛や下痢、嘔吐を改善する作用があります。さらに解毒作用もあります。

・人参(ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は消化機能を高め「気」の生成を増して、体力を回復させる作用があります。

・乾姜(カンキョウ):ショウガ科のショウガの根茎を蒸してから乾燥させたもの。薬効は、冷えをともなう腹痛、腰痛、下痢を治療する作用があります。

・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。薬効は、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたり、筋肉の緊張による疼痛や腹痛などの痛みをやわらげる作用があります。

・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張を緩める作用があります。

 

 

半夏瀉心湯の副作用

配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。

アルドステロン症、ミオパシー(筋肉障害)、低カリウム血症のある人は使用できません。

 

半夏瀉心湯の服用方法

ツムラ湯半夏瀉心湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。

 

婦人科腫瘍に伴う口内炎に対し、半夏瀉心湯 1 包(2.5 g)を微温水約 50 mL に溶解し, うがい.あるいは綿花に染み込ませて圧迫するという方法の報告もあります。