大柴胡湯の特徴

消化器系に不調がある人によく処方される漢方薬です。体の熱や炎症をとり、機能の亢進をしずめます。また、痛みをやわらげたり、便通をよくする作用があります。

 

最近ではメタボリックシンドローム、特にストレスを伴う高脂血症(脂質異常症)や糖尿病予備群、高尿酸血症や脂肪肝の人での有効性も報告があり、市販のダイエット系の漢方薬としても大手薬局で販売されるようになってきています。

 

体格がよく血色がよくて声も太い人で便秘がち、みぞおちから肋骨下部が強く張って苦しく、「胸脇苦満」が認められるような人の様々な不調に処方されます。ストレスの多い職場で働いている方(キャリアウーマンの方)、ストレスの多い環境にあり体格ががっちりした人で更年期障害のような症状で悩んでいる方に、とても効果的という経験も多い漢方薬です。

 

具体的には、肝臓や胆のうの病気、胃腸の病気、便秘や痔、あるいは高血圧にともなう頭重感や肩こり・めまい・耳鳴りなどに適応します。

 

小柴胡湯から人参、甘草を除いて、芍薬、枳実を加え、大黄を加えた漢方薬となっています。小柴胡湯に加え、動悸や精神神経症状にも向けたような漢方になっています。大黄を含まないタイプのものは、大柴胡湯去大黄と呼ばれ下痢作用が和らぐ一方、大黄は枳実や芍薬と共同して、落ち着かせる作用があるためそこも踏まえて使用する必要があります。

 

次のような人に有効です。

・体格、体力ともにある人
・上腹部が張って苦しい(胸脇苦満=きょうきくまんと呼びます)がある人
・便秘がちの人
・頑固な肩こりがあり、頭重感、頭痛がある

 
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大柴胡湯の作用・効果・作用機序

柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、芍薬(シャクヤク)、枳実(キジツ)、大黄(ダイオウ)は抑うつ作用、イライラを解除し、熱をさます作用があります。

 

大黄と枳実には便通をよくする作用もあります。

 

半夏(ハンゲ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)は吐き気を止める作用があります。

 

薬効試験では、血中の中性脂肪やコレステロールを減少させる作用が報告され、動脈効果の予防に用いられることもあります。作用機序として推定されている一つは、柴胡に含まれるSaponin(サポニン)は、腸での脂肪吸収を抑えるという機序で、斉藤先生らによる報告があります。

 

少数の報告ですが、大きないびきをかく睡眠時無呼吸症候群の方、肥満症もあるかたで使用し、眠りが浅かったと感じ具合や、日中の眠気の改善につながったという報告もあり、柴胡や半夏の落ち着かせる作用が無呼吸症候群の改善に関わっている可能性が推測されています。また、村瀬らは、睡眠時無呼吸症候群患者で、大柴胡湯内服後半年でBMIが約0.9落ちたと報告しています。(参考:日呼吸会誌. 2:142,2013)

 

そのほか、体の状態が合致する人で、次に示す病気に効能が認められる可能性があるとしてあげられています。多岐にわたりますが、気管支喘息、気管支拡張症、肺気腫、肋膜炎、胆石症、胆嚢炎、急・慢性肝炎、肝硬変、急・慢性胃炎、慢性膵炎、潰瘍、潰瘍性大腸炎、嘔吐、痔疾、高血圧症、動脈硬化症、心筋梗塞後遺症、糖尿病、高脂血症、不眠症、神経症、てんかん、肋間神経痛、蕁麻疹、化膿性皮膚疾患、副鼻腔炎、白内障、中耳炎、肩こりなどの人に適応があるとされます。

 

脂質異常症(高脂血症)に対する大柴胡湯の効果

脂質異常症に対する大柴胡湯の効果は、実際に西洋薬で試用されている脂質異常症の薬と比較した研究試験も行われており、有効性が報告されています。

 

岡先生らが行った実験では、総コレステロール(T-cho)と悪玉コレステロールであるLDLが、ウルソデオキシコール酸やフィブラーと製剤と同様にコレステロールを下げる働きを、大柴胡湯が示したと報告しています。(和漢医薬会誌, 8:468~469. 1991)

 

脂肪肝に対する大柴胡湯の効果

アルコール性ではない、食事由来の脂肪肝に対して、3ヶ月大柴胡湯を使用したところ、エコーでの肝腎コントラスト(脂肪肝では肝臓のエコー所見で脂肪肝を診断できる)が、低下、つまり脂肪肝の改善がみられたと報告されています。

 

胆石症に対する大柴胡湯の効果

胆石症の20%で痛みの改善(鎮痛作用)と、結石の排石(石がとれた)という報告があります。また、動物実験では、胆石を作りやすい食事と合わせて大柴胡湯を使用したところ、胆石が起こしにくかったと報告されています。

 

 

大柴胡湯・・薬局で買えるコッコポアG

最近は、薬局でコッコポアGという名前でクラシエから大柴胡湯を購入することができます。「あちこちについた余分な脂肪を減らす」「ストレスで過食してしまう人に」向けて出されています。便秘、頭痛、手足の冷え・ほてりがある方に向いています。肩こりやイライラが強い方、仕事に力を入れ責任感が強い方、筋肉は発達しているほう・汗かき・暑がりで、猪首気味で肥満の方の肥満症に向いています。

 

大柴胡湯と防風通聖散との違い

防風通聖散も、成人の肥満症、生活習慣病の方、メタボリックシンドロームに使用する、痩せる目的の漢方薬です。防風通聖散が適しているのは、太鼓腹でおなか全体が膨らんで弾力があるような人に向いています。一方大柴胡湯は、ストレスとの関連が強く、おなかの上の方を押すとおなかの力が入りすぎてしまい固くなる、という人に使用する漢方薬です。

 

防風通聖散は、満量処方(漢方薬の通常量)1回あたり、約50kcalほど消費カロリーを増やすという報告が出ています。これは大柴胡湯では言われていない作用です。一方、ストレスで過食してしまうという人に対する精神面での効果に加え、脂肪の吸収も抑えるというのが大柴胡湯になります。

 

柴胡+芍薬という組み合わせは、ストレス、抑鬱、緊張、イライラ、それらに由来する喉のつまりなどに効果を持つとされ、心を緩める作用を持つとされます。(結果、摂取するカロリーと吸収する脂肪のコントロールがうまくいけば体は引き締まります)

 

大柴胡湯の成分

大柴胡湯は、8種類の生薬からなります。

 

・柴胡(サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷まし、「気」のうっ滞を除く作用があります。

・黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷ましながら、「水(スイ)」の滞りを除く作用があります。みぞおちのつかえや、胃の不快感、膨満感、下痢の症状を改善します。

・半夏(ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。「水(スイ)」の代謝障害を改善するとともに、「気」の巡りを良くします。嘔吐、悪心、めまい、頭痛、痰などを改善する作用があります。

・枳実(キジツ):ミカン科キジツの果実。薬効は、芳香性の健胃作用、胸腹部のつっかえ、膨満感を抑える作用があります。

・大黄(ダイオウ):タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、便秘を改善する作用があります。「気血(キケツ)」の過剰状態を解消して「熱」をさます作用があります。

・芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の巡りをよくする作用があります。筋肉のけいれんを鎮めたり、鎮痛作用もあります。

・生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える作用があります。胸がつかえてムカムカしたり、ゲップ症状を改善します。

・大棗(タイソウ) :クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも用いるナツメの実です。薬効は、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたり、筋肉の緊張による疼痛や、腹痛などの痛みを和らげる作用があります。

 

 

大柴胡湯の副作用

 体力の充実している「熱・実証」向けの漢方薬ですので、虚弱体質の方には適していません。また、胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人副作用としてもそれらの増強が起こりうるため、慎重に用いるようにします。

 

実証の人で、大柴胡湯がよく効く方は便秘傾向のことが多いので、大黄が含有されてもひどい腹痛や下痢になることは少ないとされていますが、大黄の下痢成分であるセンノシドAはBifidobacteriumという腸内細菌によってレインアンスロンに分解され下痢作用を起こすとされ、腸内細菌の分布は人によって違うため、下痢作用の効き目は人により違いがあります。

 

配合生薬の大黄には、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用が認められていますので、妊娠中の方が服用すると、流産の原因になる可能性があります。胎児への移行性は不明です。大量でなければ問題はないという医療者もおりますが、服用の際は必ず医師とよく相談してください。授乳に関しては、大黄中のアントラキノン誘導
体が母乳中に移行し、乳児の下痢を起こす可能性が添付文書には記載されており注意しましょう。

 

西洋薬との相互作用は特に言われていません。

 

大柴胡湯は、小柴胡湯を実証向けにしたような薬剤で、共通点も多く、副作用で間質性肺炎に注意が必要です。

→参考:間質性肺炎と漢方薬

 

また、肝機能障害の報告はあるため、AST、ALT、γGTP、ALPなどの肝胆道系酵素の変化には注意する必要があります。

 

 

大柴胡湯の服用方法

ツムラ大柴胡湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。

 

基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。

 

保存は、直射日光の当たらない湿気の憂くない涼しいところで保存するのがよいとされます。