八味地黄丸の特徴

八味地黄丸は、8種類の生薬が組み合わされた漢方薬で、小便が近く、夜中に何度もトイレに起きたり、食欲はあるものの疲れやすくてだるい、精力の衰えを感じる人、腰がだるくて重い、腰痛がする人に使用されます。古くには、老化予防薬・精力の低下に対して使用されてきた漢方薬です。

 

八味地黄丸は、別名八味腎気丸あるいは八味丸とも呼ばれます。腎気丸という名前の由来でもありますが、「腎気」とは、五臓(ゴゾウ)の「腎(泌尿生殖器)」の働きを高め、「腎虚」を改善します。具体的には、頻尿・排尿困難、前立腺肥大症、精力減退、勃起障害、腰痛、坐骨神経痛、しびれ、かすみ目など老化に伴う症状を改善する目的で処方されます。

 

そのほか、糖尿病や慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性膀胱炎、男性不妊、尿失禁、排尿障害、高血圧症、肩こりや五十肩、耳鳴りなどにも幅広く応用されています。

 

中国・漢時代の「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。

 

次のような人に有効です。

・疲労、倦怠感がある
・尿量減少または頻尿がある
・口が渇く
・手足に対し、熱感と冷感を相互に感じる
・へそから下の下腹部がフニャフニャと力がない

 
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八味地黄丸の作用・効果

地黄(ジオウ)、山薬(サンヤク)、山茱萸(サンシュユ)は補益作用があります。

 

茯苓(ブクリョウ)、沢瀉(タクシャ)、牡丹皮(ボタンピ)は水分の代謝、利尿、血行促進作用があります。

 

それらに作用により、加齢による疲労感や、頻尿、排尿障害、性欲低下の症状に効果を有するとされています。

 

八味地黄丸は冷えにともなう足腰の慢性的な痛みやしびれを、体を温めることによって取る作用があります。さらに、薬効試験では、糖尿病や循環器、骨代謝への効果も動物実験などで確認されています。冷えに対しての効果発現までは数日ほど(平均3.01日)でみられ、寛解時期は13日ほどと比較的早く冷えに対する効果が出るとされています。参考:日東医誌 Kampo Med vol.65 No.2,2014

 

 

腰部脊柱管狭窄症に対する八味地黄丸の効果

腰部脊柱管狭窄症(腰痛で多い原因の一つです)の27例に対して、八味地黄丸を8週間投与したところ、腰痛、下肢のツッパリ感、しびれ感、下肢知覚障害などの自覚症状の改善が見られたという報告があります。(参考 腰部脊柱管狭窄症に対する八味地黄丸の有用性 1994)

 

冷えに対する効果は早い一方、腰部脊柱管狭窄症や腰痛などに対しては、数ヶ月単位で効いてくる場合もあります。冷えプラス腰痛の時に、附子(ブシ)末を加えると効果発現が早くなる場合もあるという意見もあります。高齢者の腰痛に対する八味地黄丸の有効性は、飲み始めて 2 週間後より 8 週間後のほうが 3~5倍高くなるという報告もあります。

 

男性不妊症に対する効果

男性不妊症、特に特発性造精機能障害(つまり、染色体異常や形態的な異常でない男性不妊)に対して、有効であったと報告されています。研究の中には、八味地黄丸投与により 17α-hydroxylase が活性化しDHEA-S が有意に上昇したとの報告があり、ホルモン環境に働く可能性が仮説としてあげられています。

 

脱毛症に対する有効性

塩化カルプロニウムとの併用で、単独で使用する場合に有意に発毛を増やしたという報告が、森原医師らによって報告されています。脱毛を腎気の低下と毛髪量が関連していると考え、(腎の華は髪)腎気を補うことで発毛を期待した研究が行われています。Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.34 No.2 2010に、写真付きで報告されていますが、驚くべき発毛の写真が掲載されています。

 

八味地黄丸の成分・効能

八味地黄丸は、8種類八味の生薬からなります(そのため八味と呼ばれています)。

 

・地黄(ジオウ):ゴマノハグサ科の根。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、「腎」の働きを活性化します。止瀉作用、緩下作用、利尿作用があります。

・山茱萸(サンシュユ):ミズキ科の果実。止汗作用、強壮作用があります。

・山薬(サンヤク):ヤマノイモ科の根茎。滋養強壮作用があります。

・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科マツホドの菌核。薬効は、利尿作用、健胃作用があります。また、浮腫、めまい、胃内停水、精神安定のために用いられます。

・沢瀉(タクシャ):オモダカ科のサジオモダカの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、からだの過剰な水分を除く作用があります。尿が出にくい、回数が多い、めまいや嘔吐の改善に効果があります。

・牡丹皮(ボタンピ):ボタン科のボタンの根皮を乾燥させたもの。薬効は、血行をよくして、「熱」をさます作用があります。血症板凝集抑制作用があります。

・桂皮(ケイヒ):クスノキ化のニッケイの樹皮または枝を乾燥させたもの。薬効は、「気」の巡りを整え、発汗によって体表の毒を除く働きがあります。解熱作用、鎮静作用、血行促進作用、抗血栓作用があります。

・附子(ブシ):キンポウゲ科のハナトリカブトの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、体を温める作用や鎮痛作用があります。冷えの強い人や関節痛、神経痛に用いられます。副作用で、舌のしびれ、吐き気、動悸、不整脈などに注意が必要です。

 

 

八味地黄丸の副作用

 体力がある人、暑がりで赤ら顔の人には適していません。

 

配合生薬の附子(成分はアコニチン、メサコニチン)は大量に服用すると舌のしびれ、吐き気、動悸、不整脈などの中毒症状がでる場合があります。小児には適しません。飲むと気分が悪くなったり飲めないな、と感じるときは、その旨を主治医に相談するとよいでしょう。

 

さらに、「地黄」が含まれているため、胃腸が虚弱な人には適していません。地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。主要成分中のカタルポールによるもので、胃粘膜の障害というよりは食欲低下や下痢などが全面に出ます。食後に内服することで改善する場合もあります。ごくまれに肝機能障害が出る場合があります。

 

 

八味地黄丸の服用方法

ツムラ八味地黄丸エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。飲んでいて、胃もたれや食欲低下や下痢などがある場合、食後に内服することで改善する場合があります。

 

基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。

 

参考文献

・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・今日から使える漢方薬のてびき(講談社)
・漢方薬の服薬指導(南山堂)