乙字湯の特徴

症状があまりひどくない切れ痔、イボ痔などによく用いられます。痔の痛みを軽減したり、便秘症状を改善する効果があります。また、陰部の掻痒や痛みの改善効果もあります。

 

柴胡(サイコ)が含まれる一種の柴胡剤です。出血が長引いたり、体力の衰えている人には適しません。(当ページの最終項に、体力に合わせた使い分けを載せています)

 

乙字湯は江戸時代の医者である「原 南陽(はら なんよう)」によって作られました。彼は自製の漢方薬に対し、「甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)……」と十干(じゅっかん)の文字をつけました。彼が考案した漢方処方は、十通りありました。したがって、乙字湯は二番目の処方にあたります。

 

次のような人に有効です。

・体力が中等度ある人
・大便がかたくて便秘がち
・症状が軽い切れ痔、イボ痔

 
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乙字湯の作用と効果を持つ病気

乙字湯は、肛門部の熱を取り、炎症を抑え、血行を改善する作用があります。おもに、柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、升麻(ショウマ)、大黄(ダイオウ)によって熱をとり、炎症を抑えます

 

そして、血行をよくする当帰(トウキ)によって、潰瘍などのでき物を小さくします。大黄は、便通を改善する作用もあるため、便秘をともなう痔に効果があります。

 

甘草(カンゾウ)は、肛門括約筋・腸管平滑筋の痙攣をゆるめる効果があります。

 

病名としては痔核、裂肛、脱肛、肛門周囲炎、便秘症の症状に使用されます。

 

大黄が含まれており、便秘に対しても有効な一方、下痢作用はそれほど強くないため、便秘がない人でも痔核などに対し使用することができます。痔核のコントロールをするために排便を増やす目的の場合には大黄を追加したり、大黄を含む麻子仁丸を併用することが効果的な場合もあります。

 

乙字湯は、内痔核に対する研究(寺澤ら)により、痛みが75%の患者で、出血が90%の患者で、脱出が80%の患者で改善したという効果を報告しています(EBM漢方.医歯薬出版, p.89-91, 東京, 2003)

ラットの実験では、肛門の炎症を改善させたという報告もあります。

 

乙字湯の成分と効能

乙字湯は、下記の6種類の生薬からなります。

 

当帰(トウキ):セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを改善します。月経不順、月経痛などの婦人科疾患の治療によく使われます。便通をよくする働きもあります。

柴胡(サイコ):セリ科のミシナサイコの根を乾燥させたもの。薬効は「熱」を冷まし、「気」のうっ滞を除く作用があります。

黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷ましながら、「水(すい)」の滞りを除く作用があります。

甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張をゆるめる働きがあります。シャクヤクの根を乾燥させたもの。

升麻(ショウマ):キンポウゲ科キンポウゲ科サラシナショウマの根茎。薬効は発汗作用、解毒作用があります。痔核を治す作用もあります。

大黄(ダイオウ):タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたもの。便秘を改善する下痢としての作用、「気、血(ケツ)」の過剰状態を解消して、「熱」を冷ます働きがあります。料理にも使われるナツメの実です。

 

 

乙字湯の副作用

 どちらかと言えば、体力の充実している「実証」向けの漢方ですので、体の虚弱な「虚証」の人には向きません。食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢など、胃腸の弱っている人は慎重に用いる必要があります。

 

軽い下痢の場合は使用することで、むしろ下痢が改善する場合もあるのですが、基本的には下痢傾向となっていくタイプの漢方薬であるため、下痢、軟便の方では注意が必要です。

 

配合生薬の大黄には、子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用が認められています。そのため、流早産について、処方医とよく相談するようにしてください。大量でなければまず心配ないという意見もありますが、慎重に検討するべき点なので、妊娠中の服用については医師とよく相談してください。

 

また、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。

 

また、生薬に黄芩(オウゴン)を含んでいるため、長期に使用した場合にまれに間質性肺炎という副作用が出うるため、空咳などの症状がないか注意しましょう。乙字湯は使いやすい薬剤であり、その分長期に使用する方も多くなるので、特に気をつけましょう。

 

そのほかの副作用としては、皮疹(発疹や赤みなど)や、食欲低下、胃部の不快感、腹痛、下痢などが起こると報告されています

 

乙字湯の服用方法

ツムラ乙字湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。

 

乙字湯の販売場所

乙字湯は、漢方専門の薬局でなくともドラッグストアにおいてあることもあります。

 

 

乙字湯と類似薬(切れ痔・いぼ痔に使うほかの漢方との使い分け)

桂枝茯苓丸・・・乙字湯を使用する人よりさらに体力がある人向け

大黄牡丹皮湯・・・大黄の名前があるように、より便秘傾向の人(体力のある人向け)

当帰建中湯・・・体力がやや少なく、便痛時の痛みが強い人向け

補中益気湯・・・体力が低下し、だるさや食欲低下がある痔の人向け