小柴胡湯の特徴

胃腸や肝臓、呼吸器などに作用して、免疫機能を整えたり、炎症を抑える働きがあります。風邪や食欲不振、はきけ、胃炎など、日常で出てきやすい病気や症状に使用されるため、小柴胡湯は歴史的に病院で一番使われてきた漢方薬でした。肝炎の治療にもよく処方されてきました。ただ、肝炎の治療に使用する、ある薬剤(インターフェロンという薬)と相互作用で重篤な副作用が出ることが知られ、現在は目的と証に合わせ慎重に使用されているため以前ほど処方数は多くありません。

 

小柴胡湯の効能は広く、風邪が長引いたとき気管支炎アレルギー疾患胃腸症状など、様々な病気や症状に用いられます。

 

また、ほかの漢方薬と飲み合わせて使用されることも多く、五苓散(ゴレイサン)、柴苓湯(サイレイトウ)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、柴朴湯(サイボクトウ)、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)など他の漢方薬と併用して使用することも多い漢方薬です。

 

小柴胡湯は、柴胡剤と呼ばれる柴胡を含む薬剤で、これは体力のある人向けの漢方薬になるため、風邪などの症状も体力に合わせて使い分けます。柴胡剤を体力のある人に用いられる順番に並べると、
①大柴胡湯→②四逆散→③小柴胡湯→④柴胡桂枝湯→⑤柴胡桂枝乾姜湯→⑥補中益気湯→⑦人参養栄湯→⑧十全大補湯(⑦、⑧は柴胡剤ではありません)になります。

 

小柴胡湯は、中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)や金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。

 

小柴胡湯は次の人に有効です。

・体力が中等度
・肋骨の下あたりが張って苦しい
・口の中の不快感、食欲不振
・吐き気がある
・時に微熱、倦怠感などがある

 

小柴胡湯が効きやすい典型的な「長引く風邪」については、午後になると熱っぽくなり、寒気はそれほどなく、口が苦く、舌がやや白く乾燥している、がよく効くとされます。
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小柴胡湯の作用・効果

柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)は胸脇苦満を和らげる作用があります。免疫調整作用と、心を緩めてストレスを軽減してくれる働きもあります。

 

半夏(ハンゲ)、生姜(ショウキョウ)は胃を温めて吐き気を抑える作用があります。

 

人参(ニンジン)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)は体力を増進し、胃腸の働きを助ける作用があります。

 

 

薬効を調べる試験では、肝機能障害の改善や肝血流量の増加、免疫調節作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用などが動物実験で確認されています。ヒトを用いた臨床試験でも、慢性B型肝炎や慢性C型肝炎に対する効果が示されています。また、JIM vol.14 no.7 2004 ─ 7では、肝炎患者の肝癌の発症率をやや下げたという報告があります。

 

ただし最近では、肝炎に対してはインターフェロンとの併用で間質性肺炎が出たこと、肝炎の治療が非常に進歩したことから、肝炎に対しての使用は減ってきています。肝炎の治療は本当に劇的に進歩しているため、以前から近くの病院に肝炎でかかっているかたも、一度総合病院の肝臓専門医(消化器科)を受診してみるとよいでしょう。

 

一方、小柴胡湯が今注目されているのは、免疫調整作用や抗アレルギー作用、抗炎症作用です。したがって、小柴胡湯は、かぜがこじれて長引いたとき、気管支炎などの熱をともなう急性疾患、各種アレルギー疾患、慢性胃腸障害、産後の回復不全など様々な症状に使用されており、それぞれに効果を発揮します。

 

また、食欲低下や気管支喘息、新派節煙、微熱などにも使用されます。

 

口内炎の漢方薬としての小柴胡湯

口内炎についても報告があり、松岡らが「化学療法時の口内炎に対する小柴胡湯含嗽液の有効性.癌と化療 31:2017─2020,2004」にて、小柴胡湯2.5gのあたり温湯100mlで溶かし、レンジで溶かしたものを、1分以上うがいしてもらい吐き出す、ということを1日3回したところ、抗がん剤治療時の口内炎確率が約6割ほど減った、と報告されています。痛みも取れたようです。

 

放射線性膀胱炎に対する小柴胡湯

また、放射線照射後の膀胱炎(放射線聖膀胱炎)に対して、報告数は多くありませんが数例で有効であったという報告があります。(参考:臨泌52巻9号1998:東邦大学佐藤ら)。これでは、投与開始後1ヶ月で血尿が消失し、中止したところ再度血尿が出現し、再開したところまた改善したという興味深い報告です。

 

小柴胡湯の成分・効能

小柴胡湯は、下記の7種類の生薬からなります。

 

  • 柴胡(サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」さまし、「気」のうっ滞を除く作用があります。
  • 黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさましながら、「水(スイ)」の滞りを除く作   用があります。
  • 半夏(ハンゲ):サトイモ科のカラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、「水(スイ)」の代謝障害を改善するとともに、「気」の巡りを調節します。
  • 人参(ニンジン):ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は、消化機能を高め、「気」の生成を増すことにより、体力を回復させる作用があります。また、新陳代謝を盛んにし、免疫機能を高める作用もあります。
  • 甘草(カンゾウ):マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
  • 生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える働きがあります。
  • 大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。胃腸の機能を整えたり、精神を安定させ、筋肉の緊張による疼痛や腹痛などの痛みをやわらげる作用があります。

 

 

小柴胡湯の副作用

小柴胡湯と間質性肺炎

小柴胡湯を服用するにあたっては、副作用に注意しなければいけません。慢性肝炎の治療でインターフェロンと呼ばれる薬を投与されている場合に小柴胡湯を併用すると、間質性肺炎という重篤な副作用を発症する恐れが高まります

 

「黄芩」「柴胡」の組み合わせの漢方薬では、特に注意が必要です。

 

発熱、咳、呼吸困難など間質性肺炎の症状が現れた場合は、ただちに使用を中止し、すぐに医師の診断を受けるようにしてください。実際、過去に小柴胡湯とインターフェロンを併用して間質性肺炎を発症し、死亡した例もいくつか報告されています。現在では小柴胡湯とインターフェロンの2剤を併用しないようにされています(併用禁忌)。インターフェロン製剤を使用中の人、肝硬変・肝臓がんのある人、慢性肝炎で血小板が少ない人(具体的には15万以下の方)には使用できません。

漢方薬と間質性肺炎

 

 

小柴胡湯と肝機能障害(漢方薬と肝障害)

小柴胡湯は、黄芩を含んでいます。漢方薬全体での肝障害は0.1%以下とされていますが、黄芩を含んでいる場合は0.5~1%と、やや肝障害が起こりやすくなるとされます。西洋薬では1-5%起こす薬剤やもっと起こりやすい薬剤もあるため、小柴胡湯が肝障害を起こしやすいわけではありませんが、黄芩を含んでいる漢方薬を使用する場合は肝障害に注意する必要があります。

 

そのため、黄芩を含む漢方薬を、長期的に使用する場合には定期的な血液検査でのフォローアップが必要で、はじめの1ヶ月で血液検査をすることや、以前使用していた方が再開するときには、1ヶ月よりも短い期間でも場合によっては血液検査を行った方が安全かもしれません。

 

黄芩をふくむ肝障害は、アレルギーによる可能性も考えられており、以前に使っていて肝障害で止めた方が再度使用した場合すぐに肝臓の数値が悪化することがあります。一緒に出てくる症状として、だるさ(倦怠感)、食欲低下、胃部~みぞおちの痛みがでます。肝障害の随伴症状としては熱や皮膚の症状は多くありません。(皮膚症状は肝障害と別個に起こることはあります)

 

中止後、2週間から10週間ほどで改善したという報告があります。

 

小柴胡湯のその他の副作用

また、甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上がる「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。歴史的に、他の漢方薬と併用されていることも多い漢方薬であるため、甘草の総量が多くなりすぎないよう注意が必要です。

甘草による偽性アルドステロン症と甘草の含有量一覧

 

皮膚症状としては、小柴胡湯による皮膚障害の頻度は、ツムラの調査で 0.2%)、クラシエの調査で0.25%の報告があります。血液検査でわかるDLSTというアレルギー検査ではなかなかわからないことも多いため検査だけに頼りすぎるべきではないと皮膚科学会は警告しています。

 

そのほか、小柴胡湯の副作用としては便秘や血尿、残尿感、膀胱炎、証が合わない方での食欲不振や胃の不快感、嘔吐、下痢、かゆみ、じんましん、腹痛、排尿時痛、頻尿などが報告されています。中枢・末梢神経障害として嗄声の報告もあります((1995年10月~1997年3月調査期間の2495例中1例のみ)

 

妊娠中の使用ですが、不育症に使用されている柴苓湯は小柴胡湯と五苓散の合剤であり、効果を有する成分は小柴胡湯とも言われています。動物による生殖試験で催奇形性は認められなかったとのことですが、やはり妊娠中の使用は主治医と相談する必要があります。

 

小柴胡湯の服用方法

ツムラ小柴胡湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。

 

定期的に血液検査を行い、肝臓の数値などをフォローしていくと、より安全に使用できます。