防風通聖散の特徴

肥満症の治療薬として知名度の高い漢方薬です。

 

このページでは、

①漢方医学の伝統的な考え方
②現代医学(西洋医学的)な観点からの研究

を元に、防風通聖散を解説します。

 

生薬による防風通聖散の効果効能の考え方(漢方医学)

生薬である防風麻黄には、病気の原因である邪気を発散させる作用があるとされています。さらに、熱や炎症をさますもの、便通をよくするもの、無駄な水分を取り去るもの、あるいは血流をよくする生薬などが組み合わせて配合されています。

 

具体的には、黄芩(オウゴン)、山梔子(サンシシ)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、石膏(セッコウ)、滑石(カッセキ)は熱を冷まし、便通をよくし、利水作用があります。当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)は血行をよくする作用があります。荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)、薄荷(ハッカ)、桔梗(キキョウ)は気を発散させる作用があります白朮(ビャクジュツ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)は胃腸の働きを助ける作用があります。

 

これらの効能の組み合わせにより、減量効果が出るようになっています。薬剤のインタビューフォーム(添付文章よりももう少し詳しいもの)の適応症にあるように、「腹部の膨満、脂肪ぶとり、便秘、のぼせなど、自家中毒がうっ滞して起こる各種の症状を目標として用いられる」とあるような、いわゆる減量効果を目的として処方されます。

 

通聖とは、「聖人による」という意味があります。

 

西洋医学的観点による防風通聖散の脂肪燃焼効果

薬理作用試験では、防風通聖散が脂肪細胞を活性化して、消費エネルギーを高める作用があることが確認されています。具体的には、1日あたりの消費カロリーの増加効果が研究されています。

 

実際の人を対象にした臨床効果を見た試験では、糖尿病を伴う肥満症の女性を対象にした臨床試験で、体重と体脂肪、特に内蔵脂肪が減り、インスリン抵抗性が改善した(=糖尿病が改善した)という報告があります。

 

具体的な研究についてまとめます。

防風通聖散の減量効果(ダイエット)における「褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞への影響」論文

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これは、カネボウの防風通聖散を用いた実験です。同じ食事量を食べたマウスに対して、防風通聖散を飲んだ群・飲まない群を比べると、防風通聖散内服を飲んだ方では白色脂肪細胞が減り、褐色脂肪細胞の活性化を示唆するチトクロームcオキシダーゼが活性化したという報告です。熱産生を増やし、カロリー消費が多くなる効果が動物実験レベルで示唆されたという研究です。

 

実際に、上の表で示すように防風通聖散を飲んだ群では白色脂肪細胞(蓄積された脂肪)の重さが減っていることが示されています。

 

よく、防風通聖散が痩せるのは大黄が含まれており下痢をした影響ではないか?という疑問を持たれることがありますが、この論文では便回数はほぼ同じであたため、下痢ではなく違う機序が考えられた研究でした。具体的な減量の機序は、褐色脂肪細胞が熱産生を増やす際に認めるチトクロームcオキシダーゼ活性の上昇していたことから、熱産生亢進によるカロリー消費増加効果と考えられました。

 

またこの論文では、防風通聖散の量が多い群の方が、少量の群より脂肪が減っていました。つまり防風通聖散の用量も大事で、適切な用量は減量効果にかかわる要素であるとむすんでいます。

 

防風通聖散の脂肪分解・脂肪燃焼効果

防風通聖散の論文や書籍の寄稿などをされている吉田俊秀医師の説が、いま考えられている防風通聖散のダイエット効果の機序です。それは、防風通聖散に入っている生薬や、白色脂肪細胞での脂肪分解を増やし、それを褐色脂肪細胞が燃焼させて脂肪を減らす、とする説です。

 

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脂肪の分解を促進・燃焼は、ノルアドレナリンという物質が脂肪細胞にあるレセプター(β3 -adrenergic receptor)を刺激することで、脂肪分解と燃焼が高まるとされています。

 

麻黄という生薬にはエフェドリンという成分が含まれており、ノルアドレナリンの分泌量を増やします。そのため麻黄を含んだ漢方薬を飲んで動悸がするかたがいたりドキドキする方がいるのですが、これは興奮性の刺激を行っているためです。そのため、ノルアドレナリンの分泌を増やす麻黄が含まれている防風通聖散はノルアドレナリンの分泌を促進させ、脂肪分解と燃焼を促進するという機序が考えられています。(ただし、他の麻黄含有の漢方薬もあるため、これは一つの機序のうちの一つと考えられています)

 

例えば他の機序として、脂肪細胞内で脂肪を分解したり燃焼させるために必要なエネルギーが、cAMP(サイクリックエーエムピー)というエネルギーなのですが、これはつねに自然に分解されていき、分解や燃焼は止まっていきます。荊芥や甘草や連翹などの生薬は、細胞内のcAMPの濃度を維持する(分解するホスホジエステラーゼという酵素をブロックする)ことで、脂肪分解や脂肪燃焼効果を持続させるように働く、とされています。

 

参考:防風通聖散の作用機序(漢方スクエア)他サイトへのリンクです

 

これらの作用により、防風通聖散は1日の消費カロリーを1回あたり50kcal、つまり1日で150kcalほどの消費カロリー増加効果がある、というように記載されています。

 

防風通聖散の消費カロリーは1日あたり+150kcalと提唱されている

 

防風通聖散の減量効果(ダイエット)における「食欲との関連」論文

伊藤隆, et al. “防風通聖散の減量効果の検討.” 日本東洋醫學雜誌 56.6 (2005): 933-939.(論文はこちらから参照できます)でまとめています。

 

この研究では、127人の肥満症患者に防風通聖散を投与し、半年間防風通聖散を使用できた33人でどれくらい体重が減ったか、という評価をしています。また、半年間使用できた33人のうち、食欲が落ちた人食欲が落ちなかった人が丁度半々くらいの人数であったため、この2群での比較もしています。

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上記のように、防風通聖散を続けた33人は平均3kgほどの減量ができたのですが、防風通聖散を飲んで食欲を抑える効果が出た人・食事制限が出来た人では4.8kg体重が減らす効果があった、という報告です。この結果をもとに、カロリー消費効果に加え、食欲にも作用するのではないかと考えられるようになっています。

 

防風通聖散は、使用により食欲が落ち着く人によりEffective

 

 

防風通聖散の適応疾患と実際の使われ方

肥満症の他にも、高血圧に伴う動悸・肩こり・のぼせ、むくみ、便秘の改善効果があり治療にも使用されています。

 

実臨床では肥満症に用いられる漢方薬ですので、ダイエット目的で服用する方が多いです。ただし、上記の研究であった食事療法との併用がより効果的な漢方薬なので、食事内容を見直したり、運動を取り入れるなどの生活習慣を改善させた上で防風通聖散を使用すると非常に効果が高い漢方薬になります。

 

肥満症に対する減量効果(いわゆるダイエット効果)を調べた臨床研究では、防風通聖散使用群・非使用群ともに食事制限などの生活習慣改善を行い、その上で防風通聖散を使用するか使用しないかという方法で減量を行っており、防風通聖散を使うことで減量の上乗せ効果を報告するものが多いです。つまり、ダイエットの外来で防風通聖散を使う場合も、合わせて食事制限を推奨した上で処方することが多いです

 

次のような人に有効な漢方薬です。

・体力が充実
・腹部に皮下脂肪が多いタイプの肥満症
・便秘症

 

特に、太っていてお腹が出ているような人に使用されます。また、暑がりで、のぼせがあり、体内の水分が停滞している人に効果的です。体力が弱っている虚弱体質の人や痩せ型の人にとっては適しません。

 

防風通聖散に含まれる生薬の効能

・防風(ボウフウ):セリ科ボウフウの根を乾燥させたもの。薬効は、皮膚の湿疹を治し、かゆみや痛みを抑える作用があります。

・黄芩(オウゴン):シソ科コガネバナの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、イライラや炎症を抑える作用があります。

・大黄(ダイオウ):タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、便秘を改善する作用、「気血(キケツ)」の過剰状態を解消して「熱」をさます作用があります。

・芒硝(ボウショウ):天然の結晶硫酸ナトリウム。薬効は、瀉下作用、緩下作用、血液凝固抑制作用があります。

・麻黄(マオウ):マオウ科マオウの茎を乾燥させたもの。薬効は、発汗作用、気管を広げて咳を止める作用があります。この生薬に含まれるエフェドリンは脂肪分解・燃焼の刺激になるノルアドレナリンの分泌を増やす作用があります。

・石膏(セッコウ):硫酸カルシウム。薬効は、熱を除き、体液の産生を促す作用があります。

・白朮(ビャクジュツ):キク科オケラの根茎を乾燥させたもの。薬効は、消化を整え、水分の循環をよくする作用があります。

・荊芥(ケイガイ):シソ科ケイガイの花穂の部分。薬効は、皮膚の炎症を抑え、かゆみを抑える作用があります。

・連翹(レンギョウ):モクレン科レンギョウまたはシナレンギョウの果皮。薬効は、熱を除き、炎症を抑えて、腫れをひかせる作用があります。

・桔梗(キキョウ):キキョウ科キキョウの根を乾燥させたもの。薬効は、膿を排出して腫れを鎮める作用があります。

・山梔子(サンシシ):アカネ科クチナシの果実。薬効は、熱を除き、イライラを抑える作用があります。

・芍薬(ショウヤク):ボタン科シャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。・当帰(トウキ):セリ科トウキの根を乾燥させたもの。薬効は、血を補い、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。

・川芎(センキュウ):セリ科センキュウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。

・薄荷(ハッカ):シソ科ハッカの葉の部分。薬効は、熱を冷まし、ストレスを緩和する作用があります。

・滑石(カッセキ):ケイ酸アルミニウムと二酸化ケイ素を主成分とする鉱物。薬効は、水分の循環をよくし炎症を抑える作用があります。

・生姜(ショウキョウ):ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもの。薬効は、腹部を温め、発汗させ、嘔気を止める作用があります。

・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります

 

防風通聖散の副作用

体力の充実している「実証」向けの漢方ですので、体の虚弱な「虚証」の人、胃腸の調子の悪い人、また、発汗の多い人には向きません。つまり若い女性でやや虚弱な方のダイエット目的には向いていません。

 

防風通聖散に含まれている麻黄には、心臓や血管に負担をかける交感神経刺激薬のエフェドリン類が含まれます。そのため、高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人は慎重に用いる必要があります。また、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、血圧上昇などの副作用が起こる可能性があります。

 

配合生薬に甘草が含まれているので、甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がる「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。血圧が急に上がる、血液検査でカリウムの値が下がっているなどは注意した方が良いタイミングです。自覚症状では気が付きにくく、脱力などの低カリウム血症の症状が出るまで気が付きにくいですが、防風通聖散を飲み始めて血圧が上がってきた、というのは血液検査をするべきタイミングの一つです。

 

参考:防風通聖散にも含まれる甘草で注意すべき偽性アルドステロン症とは

 

防風通聖散を飲むうえで絶対に してはいけないことは、過度に拒食状態の方や、痩せるために利尿剤や下剤を使っている方が併用することです。そういう方では、低カリウム血症という状態になりやすくなり非常に危険です。体力が弱っている虚弱体質の人や痩せ型の人にはそもそも向いていない漢方薬であるという原則も忘れてはいけません。

 

そのほか気を付けるべき副作用としては、間質性肺炎と肝障害が報告されています。万一のことですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。漢方薬開始後 1 か月程度と、その 1~2 か月後に 2 回目の採血を行うのが安全と書かれている本もあります(耳喉頭頸 87 巻 13 号 2015 年 12 月)

 

配合生薬の大黄(主な成分はセンノサイド)は、過量投与で腹痛、下痢、胃腸障害が起こる場合があります。さらに、子宮収縮作用、下腹部の充血作用があるので、下痢傾向の人や、妊娠している人には適しません

 

 

防風通聖散の服用方法・効果的な飲み方

ツムラ防風通聖散エキス顆粒の場合、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとなっています。なお、年齢、体重、症状により適宜増減してください。防風通聖散を飲んですぐに下痢になってしまう方は、証があっていない(防風通聖散と相性がよくない)可能性があります。防風通聖散は実証の人向けの漢方で、下痢を起こしやすい大黄が入っていますが実証の人(体質にあっている人)では激しい下痢になりにくいためです。

 

 

防風通聖散の効果が出るまでの時間

上の示した論文でも、半年で4.8kgとあるように、比較的ゆっくりと作用し効果が出るまでに時間がかかるとされます。漢方薬は、構成生薬の数が少ないほど効果発現時間が短く(早く効き)、構成生薬が多いほど効果発現に時間がかかる傾向があるとされ、防風通聖散は効果発現までの時間がかかる漢方薬です。

 

防風通聖散を手に入れる方法

防風通聖散は、病院やクリニックの外来で医療保険で処方してもらい手に入れることができます。また、満量処方といって処方箋で出される、ツムラやクラシエの保険漢方薬と同じ成分のものを通販やドラッグストアで購入できます。

 

処方してもらうのも、医師の外来であればどこでも処方してもらうことは可能です。漢方を専門的に行っているクリニックでなくても、普通の内科外来でも、かかりつけの耳鼻科や外科や産婦人科などでも処方してもらうことはできます。もちろん、担当医の判断によります。

 

また、ダイエットの自由診療の外来では、保険を使わずに購入するためやや割高ではありますが、処方箋の漢方薬と全く同じものを購入できます。

 

薬局や通販で買うのと病院処方と種類、メリット・デメリット

漢方薬は第二類医薬品といって、薬剤師や登録販売師の資格がある人であれは販売できる医薬品です。処方箋と同じ用量~やや低用量のものを含めると、防風通聖散を薬局などでみかけることは多いでしょう。だいたいどこでも買うことができます。

 

例を挙げると、
・ツムラ防風通聖散エキス
・クラシエの防風通聖散
・ナイシトールG
・コッコアポEX
・コッコアポプラスA

これらのように、たくさんの漢方薬メーカーから防風通聖散が発売されています。

 

病院で購入(処方してもらう)方が保険適応で処方され、かつ満量処方のものが購入できます。かつ費用も、ドラッグストアで購入するよりも安い場合も多いです。しかし一方のデメリットでは、特にまだ生命保険などの保険に入っていない独身者や新婚の方に特に注意なのですが、多くの肥満症の病名がつけられてしまいます。特に気にする必要はないことが多いですが、それは嫌だという人も居ますし、保険に入る際に申告する病名としては心象が悪くなると気にされる方も多いです。