抑肝散の特徴

抑肝散は神経や感情をコントロールする役割のある「肝」を抑える効果があります。つまり、抑肝散は「イライラする」「気が(神経が)高ぶって興奮している」状態を抑えて、気持ちを落ち着かせてくれる作用があります。

 

抑肝散が効果を持つ症状を挙げると

  • 日頃からイライラしがち、怒りっぽい
  • 生理前のイライラ
  • 更年期症状のイライラ、神経症
  • 筋肉がこわばってしまう
  • 精神的原因で不眠、寝つきが悪い

などがあります。

 

人は、普通の生活を送っていても「イライラする、ムカムカ」とくるようなことがあります。そのイライラ感が激しくて薬で抑えようとする際、西洋薬の精神安定剤は確かに効果は高いですが、眠気や脱力感などの副作用が出る場合があります。イライラしただけで精神安定剤を服用するなんて…といった抵抗感を感じられる方も居ます。(もちろん西洋薬の方が向いている方もおり、必要な方もいます)

 

一方、抑肝散は精神・神経疾患を持たない健康な方でも比較的安心に服用できる漢方薬です。眠くなるなどの副作用はなく、一般的に効果発現までに1~2分程度と即効性があるとされます(人によりますが)。ただ、ご高齢の方で代謝が落ち抑肝散で下痢やおなかの不調が出てしまう方には抑肝散加陳皮半夏の方が消化管に優しいため、向いている場合があります。

 

抑肝散は神経の高ぶりを抑え、気持ちを落ち着かせることにより、体の緊張状態を緩和し、筋肉のこわばりをほぐす効果があります。また、夜になっても気の高ぶりが治まらない、イライラが治まらなくて眠れないなど不眠の症状には特に効果的です。

 

寝る前に服用することで徐々に気が落ち着き、安らかな入眠とそのあとの深い睡眠をもたらしてくれることが期待できます。

 

次のような人に有効です

・虚弱体質
・日頃からイライラしがち、怒りっぽい
・生理前、更年期障害のイライラがある
・筋肉がこわばってしまう
・精神的原因で不眠、寝つきが悪い

 

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東洋医学でいう「肝」とは?抑肝散の働く肝と気分の関係

抑肝散は、文字通り「肝(カン)」を抑える薬です。東洋医学で言う「五臓六腑」の五臓の一つである肝(カン)は、私達が一般的に考える肝臓とは少し違う概念のものです。

 

東洋医学では、肝(カン)とは全身の気(き)と血(けつ)の動きにかかわる機能をもつとされています。

 

肝は、疏泄(そせつ)とよばれる気が広がって移動していく機能を持っています。気は、体内を上ったり下りたり、組織に出たり入ったりしています。このような気の動きを肝が調節しています。肝の調子が良ければ、気の動きもスムーズになります。気の動きが正常であれば、血も正常に動きます。

 

イライラする、鬱々する、怒るなどの感情は、気の動きと関わっています。さらに、肝は血を貯蔵し、からだのどの部位がどのくらいの血量を必要としているかを判断し、適度な量の血を供給する機能(蔵血機能)ももつと考えられています。この肝が乱れていると、バランスが乱れ感情の乱れが出ます。

 

肝と強い結びつきがあるのは、筋(腱・靭帯など)、爪、目です。肝に異常があると、涙の量が変化したり、筋に力がなくなったり、爪がデコボコに変形することがあります。

 

 

抑肝散の効能・効果

柴胡(サイコ)は怒りやイライラ、精神的な緊張を和らげる作用があります。釣藤鈎(チョウトウコウ)は、頭痛、耳鳴り、めまいを抑える作用があります。

 

当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)は、血を補い、血行を改善する作用があります。蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)は胃腸の働きを助けて、体内の余分な水分を排泄する作用があります。甘草(カンゾウ)は、緊張を和らげ、他の生薬との調和をする作用があります。

 

更年期障害や月経前症候群に対する抑肝散の効果

産婦人科領域では、血の道症に効果があり、更年期障害や月経前症候群を中心に有効性が報告されています。例えば、更年期障害でよく見られるホットフラッシュという突然多量の汗が出る症状を緩和する効果があります。さらに、鎮痛剤を服用しても効果がなかった重い月経痛が改善されたことも報告されています。

 

精神科領域の症状に対する抑肝散の効果

精神・神経科領域では、認知症の行動・心理症状、気分変調性障害、不安障害などの治療に用いられています。また、抗精神病薬や抗うつ薬などの向精神薬との併用で、統合失調症や大うつ病性障害(うつ病)の興奮や易刺激性の治療、さらには遅発性ジスキネジアなどの錐体外路症状の治療などに応用されることがあります。

 

小児のひきつけや夜泣きに対する抑肝散の応用

小児科領域では、もともと乳幼児のひきつけ、けいれん、歯ぎしり、夜泣き、嘔吐、少食、不眠の治療に昔から使われていました。適応疾患として、「癇症、神経症、神経衰弱、ヒステリーに用いられ、また夜啼、不眠症、癇癪持ち、夜の歯ぎしり、てんかん、不明の発熱、更年期障害、血の道症、四肢萎症、小児麻痺、陰萎症、悪阻、チック症、脳腫瘍症状、脳出血後遺症、神経性斜頸などに応用されています。

 

抑肝散の構成生薬と効能

抑肝散は以下の7つの生薬からできています。

 

蒼朮(ソウジュツ)キク科ホソバオケラの根茎を乾燥させたもの。薬効は水分循環を改善する、利尿作用があります。

茯苓(ブクリョウ)サルノコシカケ科マツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は利尿作用、気分を落ち着ける、動悸を鎮める作用があります。

川芎 (センキュウ)セリ科川芎の根茎を乾燥させたもの。薬効は、血行をよくして貧血症状を治す作用、セロリのような匂いと味がします。

釣藤鈎(チョウトウコウ)アカネ科カギカズラのトゲ。薬効は、脳循環をよくする作用があるとされ、手足のふるえ・けいれんなどを抑える作用があります。

当帰(トウキ)セリ科カラトウキの根を乾燥させたもの。薬効は血行をよくして貧血症状を治す作用があります。

柴胡(サイコ)セリ科ミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は熱や炎症をさまし、腹直筋など筋肉の緊張をゆるめる作用があります。

甘草(カンゾウ)マメ科カンゾウの根を乾燥させたもの。薬効は、緩和作用、止痛作用、生薬を口に入れると甘さを感じられます。

 

 

抑肝散の副作用

抑肝散は、人によっては、服用時に胃に不快感を生じたり、食欲がなくなる場合があります。重い副作用はめったにありませんが、配合生薬である甘草を大量に服用すると、浮腫を生じたり、血圧が上がる「偽性アルドステロン症」という症状が出てしまう可能性があります。

⇒参考:偽性アルドステロン症

そのほか、間質性肺炎と肝障害が報告されています。もしも咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。