(このページは、スクールカウンセラーと医師の監修により作成されております)

 

ADHD(注意欠陥・多動性障害)と医療機関

ADHD(今回は大人のADHDは除きます。)と思われる子どもを抱える家族や学校関係者は、不注意や多動・衝動性によって起こるトラブルに対してどの様に対応していけばいいのかに苦慮し、医療機関に繋がる場合がよくあります。

 

ADHD児への対応で一番大切なのは、児への心理社会的対応ですが、家庭や学校では大人が介入しなければならない場面が数多く出現するために、対症療法的に医師からメチルフェニデートやアトモキセチンを処方されることがあります。

 

服薬をすることで、対人関係が良くなったとか、落ち着いて生活ができるようになった、学習に集中して取り組めるようになったという効果が見られるようになります。服薬による有効率も65~80%というデータもあり、有効率は高い一方で、食欲減退・頭痛・腹痛・不眠といった副作用がみられることがあります。

 

養育者の中には、西洋薬に対する抵抗感や子どもに精神薬を飲ませるという罪悪感を持つこともあります。長期に服薬することでの依存性や思春期における成長への影響を心配する養育者もいます。

 

 

ADHDに対する西洋薬と漢方薬の併用

ADHDは、病気ではなく脳の機能障害であるために治療は長期にわたります。当然のように服薬する期間も長くなるために西洋薬を長期に飲むという行為自体を懸念する養育者もいます。

 

有効率の高い西洋薬を全く使わずに漢方薬だけでという考え方もありますが、西洋薬を必要最小限の量にとどめるために漢方薬を併用していくという考え方や、改善してきたら西洋薬・漢方薬ともに内服内容を調整する、ということも重要になってきます。

 

最近は、西洋薬と漢方薬の併用を勧める精神科医・児童精神科医も増加してきました。西洋薬に対する不安のある養育者は医師に相談をして、西洋薬と漢方薬の併用も一つの選択肢だと思います。ただし、漢方薬の方が西洋薬より必ずしも優れているわけではありません。「なぜ、薬を続けることが心配なのか」、「長い目で見たときに、どうしていきたいのか」というのは、価値観も含めて主治医と話しあっておけるとよいのではないでしょうか?

 

 

ADHD児の二次障害

ADHD児にみられる不注意・多動・衝動性といった行動は、実行機能をコントロールする前頭前野を含む脳の働きに偏りがあるために、児自身ではコントロールすることが難しくなり、大人から繰り返し注意や叱責を受けたり、学校ではクラスの子とのトラブルが絶えないために人間関係が上手くいかなくなります。

 

そのため、成長していき自分のことを意識するようになってくると「何故私ばかりが」とか「私ってなんて駄目なのだろう」といった劣等感や自己否定的な考え方を持つようになり、児自身はイライラするようになります。行動も荒れてきます。

 

二次障害を起こすと家族も学校でも児の対応は一段と難しくなります。思春期に入るとますます難しくなってきますので、二次障害にならないようにするためにも心理社会的対応と服薬は大事になってきます。

 

こういった、数値では測りにくい

 

漢方の考え方

西洋医学の場合、症状があっても検査等で異常がなかったり、診断がつけにくい場合は、病気とは解釈をせずに症状を軽減させるための薬を対症療法的に処方します。

 

一方漢方では、症状があれば病的状態であると解釈をします。局所的な症状で捉えるのではなく、体力がないかあるかの虚実、冷えを伴うか熱を伴うかの寒熱、症状が内にこもるのか外に現れるのかの陰陽、気血水の異常、五臓の異常などの概念よってその人の心身全体を見て、その歪みを是正していくための薬を選んでいきます。

 

子供のADHDには、アスペルガー症候群やいくつかの他疾患の合併も多いです。なので、西洋学的な見極めも、きっちりとおこなっていくとよりよいでしょう。

 

ADHDに使われる漢方薬

ADHD児に対してよく処方されるのが、抑肝散や抑肝散加陳皮半夏です。どちらも、神経が過敏で、興奮しやすく、怒りやすく、イライラする人に処方されます。陳皮半夏が加わるかは、体力の違いによるものです。どちらの方剤も、五臓の中の肝の働きと関係していると考えられています。肝は感情をコントロールし、謀慮を生むと言われているからです。

 

医師による、抑肝散や抑肝散加陳皮半夏をADHD児へ処方して効果を認めた例は数多く報告されていますが、臨床研究での効果がどの程度あるのかについての報告は極めて少ない中で、有効性を検討した症例報告があります。

 

処方したADHD児の中で、癇癪・興奮しやすい・イライラする・乱暴・多動などの情緒行動症状が56%を占めており、服薬による効果を示したのが61%で有効であったと報告されています。

 

ADHD児に対して、抑肝散抑肝散加陳皮半夏は有効性が高いと考えられます。

 

ADHDに対する抑肝散や抑肝散加陳皮半夏については、日本東洋医学雑誌 Vol. 62 (2011) No. 3 P 479-508によく掲載されています。どれくらいの患者にどれくらいの割合で使用したかというデータがとってあり、一読に値するものと思われます。

 

甘麦大棗湯も興奮が著しく、イライラする児に対して処方される漢方薬です。生薬の甘草と小麦には鎮静作用があり、大棗に抗ストレス作用があるからです。

 

体力があり熱を伴うような児には、鎮静効果のある柴胡・竜骨・牡蛎が含有されている柴胡加竜骨牡蠣湯は効果が期待できる漢方薬ではないかと思われます。

 

虚弱体質の児には、加味帰脾湯を用いるという考え方もあります。

 

どの漢方薬を服用するにしても、将来的に見直すことも大事です。現時点では最適であっても、変化していく症状に合わせて漢方薬も変えていくことが重要です。