ベーチェット病とは

ベーチェット病とは、全身の皮膚や粘膜に急性の炎症発作を繰り返す疾患です。急性の炎症発作とは、例えるならトゲが刺さった後の反応に似ています。つまり、トゲが刺さり、そこが熱を持ち腫れて痛みを持つ(炎症を起こす)、そういう症状がいろいろな臓器でおこります。

 

具体的な症状としては、口腔粘膜のアフタ性潰瘍・外陰部潰瘍・皮膚症状・眼症状の4つを主症状とし、これらの症状が何年もの時間の中で、再発・寛解を繰り返す(完全によくなったり、一時的に悪くなったりを繰り返す)のが特徴です。

 

ベーチェット病の原因ははっきりしていませんが、遺伝的素因に環境因子・細菌やウイルス・ストレスなどが関与し、免疫系の異常が生じることにより炎症が起ると考えられています。20~40代の発症が多く、男女差はほぼありませんが、重症例は男性に多く見られます。日本は、HLA-B51と呼ばれるベーチェット病の素因を持っている家系が諸外国よりも多いため、この病気はほかの国の場合よりも起こりやすいです。

 

 

ベーチェット病の症状と治療

ベーチェット病の症状があっても、他疾患と区別するのが難しいこともあります。症状の特徴や他の症状との組み合わせ、症状を繰り返すかなどによって総合的に判断されます。ベーチェット病の治療法は共通ではなく、それぞれの症状に対応した治療が行われます。

 

口腔粘膜のアフタ性潰瘍

口唇・舌・歯・頬や口蓋など口腔内の粘膜に円形の潰瘍ができます。はっきりした形で痛みを伴い、繰り返し起こることが特徴です。ベーチェット病では、ほぼ必ず現れる症状です。治療は口腔ケアや副腎皮質ステロイド軟膏の塗布、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤・コルヒチン(白血球が炎症部位に集まるのを抑制する薬)などの内服を行います。

 

皮膚症状

赤く皮ふがしこりのようになった皮疹(下腿や前腕に好発する、結節性紅斑と呼ばれる皮疹)や、挫創(にきび)のような皮疹(顔、首、胸、背中など)、血栓性静脈炎(主に下腿)などが見られます。痛みを伴うものもあります。治療は口腔粘膜症状と同様です。

 

外陰部潰瘍

男性では陰嚢、陰茎、亀頭、女性では大小陰唇、膣粘膜などに痛みを伴う潰瘍ができます。こちらの治療も粘膜皮膚症状と同様です。局所の清潔も大切です。

 

眼症状

前眼部に起こる虹彩毛様体炎による眼痛・充血・霞目・羞明(まぶしく感じる)や、後眼部に起こる網膜絡膜炎による視力低下や視野異常が起ります。網膜絡膜炎では発作を繰り返すうちに障害が蓄積され失明にいたることもあります。ほぼ両目に起こる症状で、白内障や緑内障・網膜の障害などを合併することがあります。

 

虹彩毛様体炎の治療には、目の中でも表面のほうだけに炎症がある場合は、主に副腎皮質ステロイドや散瞳薬(虹彩の癒着を防止する)の点眼を行ないます。奥のほうに炎症がある場合、つまり網膜絡膜炎では後眼部への副腎皮質ステロイドは点眼薬では十分ではないため、飲み薬や点滴のステロイド投与や、TNF-α阻害剤と呼ばれるレミケード・ヒュミラなどの薬が使用されます。

 

発作予防のためのコルヒチンや免疫抑制剤の投与も行われます。

 

 

その他の症状

膝・肩・手足首など比較的大きな関節に起こる炎症、副睾丸炎の腫れや痛みが起ることがあります。関節炎にはコルヒチンが有効とされています。

 

また動脈や静脈といった大きい血管に血栓などが生じる、腸管に潰瘍ができ腹痛・下痢・下血などの症状が現れる、髄膜炎・片麻痺・認知機能障害などの神経症状が現れるものがあります。これらは特殊型といい、血管型・消化管型・神経型ベーチェット病と呼ばれています。副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤、潰瘍性大腸炎治療薬などが症状によって使われます。

 

 

効果的な漢方薬治療と対策

漢方ではベーチェット病に限らず炎症は「火(過剰な熱)」と呼ばれ、これを改善するためには熱を冷ます作用がある漢方薬を中心に用います。ベーチェット病の症状は様々であり、それぞれに合わせた処方が選択されます。

 

温清飲・・・体内の熱を冷まし炎症を抑える「黄連解毒湯」と、血液の働きや不足を補い血流を良くする「四物湯」を合わせた処方です。ベーチェット病の代表的な漢方薬で、粘膜の潰瘍や皮疹などに用いられます。体力中程度で皮膚が乾燥した人の分泌物が少ない皮膚病などに効果的です。

 

竜胆瀉肝湯・・・熱を冷まして充血を取り、体の余分な水分を除き、肝臓や腎臓の働きを助けて解毒を促す作用があります。泌尿器系や生殖器系の疾患によく用いられ、ベーチェット病では主に外陰部潰瘍に使用します。眼症状に良いとされる例もあります。比較的体力がある人に向いています。

 

黄連解毒湯・・・体内の熱を冷まし、炎症や充血をしっかり抑える作用があります。熱が原因の炎症や出血に幅広く用いられます。ベーチェット病では熱感や痛みが強い粘膜症状に使用されることが多い漢方薬です。

 

半夏瀉心湯・・・体内の熱を冷まし、ストレスなどによる胃腸の不調を改善する作用があります。一般的な胃腸炎や口内炎に用いられ、ベーチェット病では口腔内のアフタ性潰瘍によく使用されます。体力中程度で胃のつかえやお腹のゴロゴロ鳴る感じがあるような人に向いています。この漢方薬は、うがい薬的に使用する、という方法が経験的に行われ、確かに一定数効果を実感される方がいる印象です。

 

十全大補湯・・・胃腸の働きを整えて体に元気をつけ、不足した血を補う作用があります。体力や免疫力が落ちた人の粘膜症状や、体質や胃腸が虚弱で温清飲が適さない場合などに使用されます。