「心房細動」とは 、心臓の拍動が不規則に乱れる不整脈の一種です。

 

心房細動を理解する上で、まず心臓が動く仕組みについて説明します。

 

心臓は筋肉でできており、4つの部屋に分かれています。上の2つの部屋を心房、下の2つの部屋を心室と呼んでいます。血液で満たされた心臓は、微弱な電気信号の刺激を受けて収縮し、全身に血液を送り出しています。すなわち、心臓は血液循環のポンプの役割を果たしています。

 

この電気信号は心房にある洞結節という部位から、1分間に50~100回規則正しく発生し、心拍数を一定に保っています。

 

 

ところが、何らかの原因で洞結節以外の場所から複数の異常な電気信号が発生すると、心房が1分間に400~600回も不規則に収縮するようになり、小刻みにけいれんしているような状態になります。これが心房細動です。

 

心房細動になったら、必ずしも心拍数が上がるわけではありません。心房の電気信号が心室に伝わるときに、房室結節という部位で電気の量を調節する機能があるので、多少心拍数が上がっても極端に心拍数が上がるということはありません。しかし、房室結節からの電気信号が不規則になるので、脈拍が不規則になります。

 

心房細動の原因は、心臓弁膜症、拡張型心筋症、肥大型心筋症などの心疾患をもっていると発症しやすく、高血圧、アルコール、喫煙、過労、ストレスなども原因になると考えられています。また、年齢が上がるにつれて発症率が高くなります。

 

症状としては、動悸、息切れ、胸が苦しい、ふらつき、疲れやすいなどがありますが、人によっては症状が全く現れない場合もあります。

 

 

心房細動になったからといってすぐに命にかかわるような不整脈ではありませんが、合併症に気をつけなければいけません。

 

特に注意したいのが脳梗塞です。心房が小刻みに動いていると、十分に収縮できず、心房内の血液の流れが遅くなります。フルーチェなどを想像してもらうと分かりやすいですが、固まりやすい液体を揺すっていると、固まりやすくなりますが、同じように心房細動では心臓の中に血栓ができやすくなります。

 

 

そして血液が心房に滞まりできた血栓と呼ばれる血液の塊がが、心臓の外に出ていってしまい、血液の流れにのって脳の血管につまってしまうと脳梗塞を引き起こすことになります。したがって、心房細動では血栓を予防することも必要になります。

 

血栓を防止するために血液をサラサラにする抗凝固薬による治療も行われます。CHAD2スコアと呼ばれるリスクに応じ、心不全のある方・高血圧のある方・75歳以上の方・糖尿病のある方・以前に脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こしたことがある方では特にリスクが高いと考え、抗凝固剤の適応があるとされています。

 

 

その他の治療法としては、発作で動悸症状が強い場合などは心房細動を正常なリズムに戻したり、再発を防止するために抗不整脈薬を用います。また、心拍数を調整するためにβ遮断薬、ジキタリス製剤、カルシウム拮抗薬が使われます。そして、症状がひどい場合や、薬物治療の効果があまり見られない場合には、心臓カテーテルによる治療を行います。

 

漢方医学と心房細動

漢方医学では、心房細動を含む不整脈がすぐに治るわけではありませんが、不整脈を引き起こしにくい体質に改善していくことで症状を減らすことができます。不整脈は「心悸」と呼ばれ、心の異常によるものと考えられています。主に4つのタイプに分けられます。

 

一つ目の「心気虚」タイプは、心の気が不足している状態です。高齢者に多く、心の血液循環作用が低下し、疲れやすく、動悸、息切れが生じやすくなります。この場合には、「灸甘草湯(しゃかんぞうとう)」や「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」を使用します。

 

二つ目の「心陽虚」タイプは、心の陽(熱エネルギー)の不足すなわち体を温める機能が低下した状態です。心気虚の症状に加え、冷えが伴います。この場合には「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」を用います。

 

三つ目の「心陰虚」タイプは、心の陰液いわゆる潤いが不足している状態です。精神不安や動悸、息切れ、胸のつかえ、手足や顔の熱感などが見られます。この場合にはや「天王補心丸(てんのうほしんがん)」や「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」が用いられます。

 

四つ目の「心血虚」タイプは、心の血が不足している状態です。心を養う血が不足することにより、血液循環作用が低下します。貧血傾向があり、めまい、動悸、眠りが浅いなどの症状がが生じやすくなります。この場合には「四物湯(しもつとう)」や「 酸棗仁湯(さんそうにんとう)」が用いられます。

 

 

西洋薬はすぐに効果が表れる反面、長期的に服用すると副作用の問題があります。一方、漢方薬の場合、効果がゆっくり現れますが、長期間服用しても安全性が高いのが長所です。しかし、心房細動に対する脳梗塞の予防効果などについてはまだまだ科学的根拠に乏しいのが現実です。

 

血栓が起こしやすい方は、やはり循環器科にかかり経過を見ていくのが安全というのが当サイトの結論です。オプション的に漢方薬を試みるのは良いですが、基本の治療を怠り脳梗塞や全身の塞栓症を起こすことはさけるべきなので、循環器科に相談し治療を受けたうえで、相性の良い漢方を希望される方は相談してみるのが良いと考えます。

 

最後に、心房細動は加齢や生活習慣の影響が大きいので、漢方薬を取り入れると共に、日頃からストレスをためない規則正しい生活習慣を心がけることも大切です。