変形性膝関節症の症状の特徴

膝関節は体重を支える役割があることから、障害が起こりやすい部位です。膝痛の原因は、年齢により大きく異なります。

 

若い人の場合の膝痛はスポーツによる怪我により前・後十字靭帯や内側・外側側副靭帯などを損傷したり、断裂したりすることがほとんどですが、中高年以上になると、スポーツによる靭帯の損傷や断裂よりも、変形性膝関節症などの関節の衰えによる疾患が増えてきます。

 

変形性膝関節症の初期症状は、歩くときの痛みです。歩き慣れると、痛みが緩和し、さらに歩きつづけると再び痛くなるという傾向があります。また、立ち上がったときや、階段の上り降りに痛む場合もあります。

 

自然に痛みが消えることもありますが、徐々に悪化して、関節の可動域が狭まり、痛みがひどくなる場合も多いです。比較的女性に多く、肥満や、O脚の人との関連性が強い疾患です。

 

西洋医学の治療

西洋医学では、消炎鎮痛薬の内服が中心です。特にNSAIDsと呼ばれるロキソニン®やハイペン®や、胃への負担が少ないセレコックス®などが使われます。

 

湿布剤やテープ剤もありますが、貼った時は気持ちが良いけれども、単なる気休めにしかなりません。最近はロコアテープ®という、高濃度で関節へ浸透するタイプの湿布薬も出ましたが、胃潰瘍などの副作用が添付文書に書かれているように全身への影響に注意する必要はあります。

 

場合によっては、関節軟骨保護剤であるヒアルロン酸製剤の関節内注入も行われますが、根本的な治療とはなりません。Fish oil(魚油)が良いというような報告もあります。

 

重症になると、人工関節置換術のような手術的治療を行う場合もあります。

 

体重が重いと、膝にも負担が大きくなるため、肥満傾向の人には、体重を減らすように指導を行います。また、膝の安定性をよくするために、大腿四頭筋の筋力を強化する運動療法も行います。

 

O脚の人には、靴に中敷を入れて、O脚を矯正する方法もあります。実際の治療ではありませんが、膝への負担を減らすのに有効です。

 

変形性関節症の漢方医学の治療

骨や軟骨の変形や、すり減りがひどい場合は、漢方治療にも限界があり、西洋医学的治療に頼まざるを得ませんが、症状がひどくない中程度以下の場合は、単に痛みを止めるだけでなく、体質改善的な効果も期待して治療を行います。

 

漢方薬の中には直接、関節の痛みや炎症を軽減する効果のあるものと、全身の体質を改善して、その結果痛みを軽くさせるものがあります。漢方薬を選択する際は、冷え、疲れ、浮腫、食欲不振、便秘、下痢などの有無に着目して処方を決めていきます

 

変形性膝関節症に最もよく用いられるのは、防已黄耆湯です。色白で血色が悪い、汗かきで疲れやすく、浮腫のある水太りの体型の人で特に使用されます。この漢方薬に含まれている防已、黄耆、白朮は、いずれも利尿作用があり、膝に溜まる水を排出させ、関節の腫れを緩和してくれます。さらに防已の鎮痛作用や大棗の緊張緩和作用で、膝関節の痛みにも効果があるとされます。体力のない人や高齢者に適しています。

 

一方、体力があり疲労感がない人で、関節が腫脹し、熱感を帯びて、強い圧痛がある場合は、越婢加朮湯を用います。この漢方薬に多く含まれている石膏や麻黄が体内に滞っている熱を下げる生薬で、さらに麻黄の駆水作用で余分な水を排出させる生薬です。また、防已黄耆湯と同じ程度に白朮や大棗が含まれているため、鎮痛作用、緊張緩和作用も持る漢方薬とされています。

 

越婢加朮湯を用いるほど熱感もなく、腫れもないが、痛みはずっと継続している人には、薏苡仁湯を試してみるとよいでしょう。この漢方薬は、主に関節痛、筋肉痛、神経痛に用いられ、体力が中程度の人で、関節や筋肉の腫れ、痛みがある人によく処方されています。配合の大部分を占める薏苡仁には、利尿作用、鎮痛作用、排膿作用、消炎作用があります。そして麻黄の解熱、駆水作用と、当帰の鎮痛、鎮静作用、血液循環促進作用があります。従って、薏苡仁湯には、膝の慢性的な痛みに対して効果のある生薬の配合となっています。

 

ただし、越婢加朮湯も薏苡仁湯にも麻黄が含まれているため、胃部不快感や食欲低下、交感神経興奮作用で不眠や血圧上昇などの有害な症状が現れることがあるため、体力のない人や高齢者の服用には注意を要します。

 

下半身が冷え、上半身がほてるという体質の人の関節痛には、五積散が用いられます。茯苓、半夏、陳皮、蒼朮によって体内の水分の滞りを調整し、当帰や川芎によって血の巡りを良くすることによって、冷えを解消させます。芍薬や大棗によって痛みに対する効果を期待します。五積散は痛みを取り除くというよりも、水と血の滞りを改善させ、全身のバランスを正常にする効果の方に向かう漢方薬です。

 

変形性膝関節症に対して用いられる主な漢方処方

以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 体力のある人
  • のどの渇き、むくみ、発汗、尿量が減少する、関節炎、変形性膝関節症の初期→越婢加朮湯
  • 腫れて、熱をもつ関節痛、筋肉痛、腰痛→薏苡仁湯
  • 体力中程度
  • 関節痛、関節リウマチ、筋肉痛、神経痛、変形性膝関節症の初期→麻杏薏甘湯
  • 下半身の筋肉痛、関節痛、神経痛→疎経活血湯
  • 体力がない人
  • 下半身の冷え、みぞおちにつかえ、関節痛、神経痛→五積散
  • 関節の腫れ、こわばり、筋肉の萎縮、関節炎、関節リウマチ、変形性膝関節症の後期→大防風湯
  • 体力無関係
  • 腹筋が緊張、痙攣性の痛み、頓服で服用→芍薬甘草湯

 

ライフスタイルで注意すること

変形性膝関節症は、肥満傾向の人に多いです。体重が増えるとそれを支える膝にも負担がかかるため、体重コントロールが大切です。

 

正坐をすると膝への負担が大きくなります。長時間の正坐をなるべく続けないようにすることが大切です。

 

また、膝関節にサポーターをする人もいますが、きつく巻いたり、ずっと巻いたままにすると、膝の関節運動を制限してしまい、かえって逆効果になってしまいます。それよりは膝周辺の筋肉を強化して、膝の安定性を高めることが大事です。

 

 

参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・痛み・鎮痛の基本としくみ(秀和システム)
・漢方相談ガイド(南山堂)