症状の特徴

肝機能障害は、肝臓の数値(ASTやALT)、時に胆道系の酵素(ALP,γGTP)などが高いこと全体を表します。具体的に肝機能障害の原因となる病気は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、薬剤性肝炎、自己免疫性肝障害、代謝性肝障害などに細かく分類されます。

 

日本では、一過性の薬剤性のものを除くと、ウイルス感染によるウイルス性肝炎が最も多く、そのうちC型肝炎は150万人以上の感染者がいるとされています。

 

ウイルスによる慢性肝炎は、肝細胞が壊死、線維化を起こし、肝硬変へ進行します。そして最終的には、肝がんへ移行する場合が多いです。現在は治療がとても進歩したため、昔と最も様相が変わった病気の1つと言ってよいでしょう。

 

アルコール性肝障害は、飲酒をやめないと、重症化する例もあります。

 

薬剤性肝炎は、発熱、発疹、かゆみ、黄疸の症状が現れます。原因の薬物を止めると症状は改善することもありますが、時に、劇症化する場合があります。

 

自己免疫性肝障害は、免疫異常によって、自己の細胞を攻撃するためにおこります。30~50歳代の女性に多く発症します。

 

 

西洋医学の治療

肝機能障害の原因の解明し、その原因を除去、あるいは薬剤で抑制する治療を行います。

 

慢性肝炎で約90%を占めるウイルス肝炎では、原因ウイルスを排除するインターフェロンや、リバビリンなどの抗ウイルス薬による治療が優先となります。インターフェロンと抗ウイルス薬の併用治療によって、ここ数年で劇的に治療が進歩し、C型肝炎は型によらず治療が可能となってきています。そのため、C型肝炎の方は必ず消化器科を受診しましょう。特に肝臓専門医の受信が良いでしょう

 

また、肝機能を改善する目的にグリチルリチン製剤やウルソデオキシコール酸も用いられます。肝機能の低下によって低下したアルブミン血症を改善するアミノ酸製剤も用います。

 

 

漢方医学の治療

肝臓の病気は、基本的には西洋医学による治療が中心となります。

 

漢方治療は、対症療法的に使われ、倦怠感、イライラ感、食欲不振などの症状の改善を目的として用いられています。

 

基本となるのは、小柴胡剤をはじめとする柴胡剤です。臨床研究では、肝機能を改善したという報告があります。しかし、小柴胡湯は、インターフェロン治療を行っている人が併用をして、間質性肺炎の副作用で亡くなったという事例もあることから、小柴胡湯とインターフェロン製剤の併用は禁忌とされています。

 

血の巡りをよくする作用のある桂枝茯苓丸は、脂肪肝による肝機能障害の改善や、肝細胞線維化の抑制作用が報告されています。

 

肝硬変に移行した場合、倦怠感や食欲不振が強く出るために、補中益気湯や十全大補湯、人参養栄湯などの補剤が用いられます。

黄疸には、茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散が用いられます。

 

このページをご覧の方の中には、西洋医学への苦手意識や新薬への不安から漢方で何とかできないか、と考えて来訪いただいた方もいるでしょう。漢方薬という選択肢はきっとないわけではないでしょう。特に原因によってはです。しかしC型肝炎などの分野では、治療が進んできた西洋医学の優位性には圧倒的に及ばないと考えます。やはり西洋医学の病院受診するべきと断言します。

 

肝機能障害に対して用いられる主な漢方処方

以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 体力のある人
  • 慢性肝炎で黄疸、口の渇き胸脇苦満がある→大柴胡湯
  • 体力が中程度の人
  • 急性、慢性肝炎、肝硬変→黄疸、みぞおちが痛む、吐き気、便秘→茵蔯五苓散、茵蔯蒿湯
  • 慢性肝炎、下腹部の張り→桂枝茯苓丸
  • 急性、慢性肝炎、胸脇苦満、腹痛、吐き気→小柴胡湯
  • 体力がない人
  • 慢性肝炎、虚弱体質、神経過敏、微熱→柴胡桂枝乾姜湯
  • 慢性肝炎、倦怠感、貧血、食欲不振→人参養栄湯
  • 慢性肝炎、肝硬変、倦怠感、食欲不振→十全大補湯、補中益気湯

 

 
ライフスタイルで注意すること

肝臓に負担をかけないために、全身の安静と、栄養補給が必要です。また、かぜをひかないようにすることも大切です。過度のストレスや疲労を避けて、軽度の運動などの体力維持や、ストレス発散も大切です。

 

 

参考文献
・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・図解でわかる肝臓病(主婦の友社)